病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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病気と一緒に生きていくこと
「どうせ」はポジティブな変化の始まり

病気のお子さんにとって、不快な症状が続いたり、治療によって思うように改善しなかったり、学校に行けなくて家で静養していたり、つまらないことが続くと「自分なんて、どうせ…」と気分が落ち込み、滅入ることも多いことでしょう。

でも、そうした姿は何もアピールしなくても、周囲の人に何か静かな影響を与えています。
看護師として病棟勤務していた20代の頃、日々目にしていたそうしたこどもたちの姿が、今の私を育ててくれたのだなあと思うのです。

先日読んだポール・ギャリコの『雪のひとひら』、この本の中にそうした気持ちを想起させる場面がありました。
『雪のひとひら』とは1つの雪のかけらが地球の世界に降ってきて、地上でいろんな冒険をすることが、描かれた小説です。ギャリコは雪のひとひらに命を吹き込み、家族を持たせ、まるで人間の一生のように綴っていきます。雪のひとひらは雪だるまの一部になったり、溶けて水のしずくになって川に合流し、湖に向かい、そして町の中を流れる生活用水に変わって、火事の消火に使われて、また川に戻り、海へ至り…どんどん、めまぐるしく変化します。
「ファンタジーの世界」、確かにそうかもしれないけれど、何かこう今を生きる人間の一人語りを静かに聞いているかのようで、何か引き込まれるところがありました。

その中でこんな場面が出てくるのです。
雪のひとひらが、粉挽小屋の水車の中に巻き込まれた時のことです。
水車の高さから落下する強い衝撃、響き、水車のきしみ、物音…雪のひとひらはそれをひどく怖がっていました。

あまりのことの到来に、雪のひとひらはふるえあがり、
助けてくれと叫ぶことさえできませんでした。
これはてっきり最後の日がやってきて、
この身もほろびるのだと思いこみました。


引用文献:
ポール・ギャリコ著, 矢川澄子訳(1975)『雪のひとひら』新潮社, p.42

水の立場に立ってみれば、確かに回る水車の中に入って落下するって、どれほど恐ろしいことでしょう。
やっとの思いでその水車から抜け出し、広い川に出て漂っていた時、雪のひとひらは自分に声をかける誰か存在に気付きました。それは雨のしずくでした。

「きれいだなあ、きみは」と雪のひとひらに声をかけた雨のしずく。そして雪のひとひらの後を追って山を下りてついてきたけれど、あんまりきれいだから、声をかける勇気がなかったというのです。
雪のひとひらは、思わず嬉しさでいっぱいになっていると、雨のしずくはこんな言葉を続けました。

雨のしずくは、今度はややてれくさそうにいいました。

「きれいはきれいだけれど、
  あの水車めぐりのときはよく頑張りましたね。
  ぼくはもうてっきりだめかと思った。
  だが、きみのやるのを見ていたら勇気が出てきてね」

雪のひとひらはうれしくてうれしくて、
ぽうっとする思いでした。
自分ではしんじつ誰よりおびえあがっていたつもりなのに、
それをよくやるなと思っていてくれるひとがあったのです……


引用文献:前掲書, p.47

今、お子さんは治療がうまく進んでいなくて、気分も滅入って、散々な気持ちかもしれません。でも、お子さんは自分で「ぼく(私)、こんなに頑張ってるんだよ!わかってよ!」と言わなくても、その頑張りは、皆、周りの人たちには伝わっているのです。
雪のひとひらが卒倒しそうなくらい震え上がっていたときも、そこに自分の強さを見出してくれる雨のしずくがいたように。

そしてもしお子さんが「ぼく(私)は、全然頑張っていない」と思ったとしても、実は他の人から見たら、すごく頑張っているのと同じってこと、よくあるのです。それを他の人はよくわかっているのです。
それを口に出すか出さないか、そういうこと。
でもきっと、それを短い言葉で伝えてあげることって、必要なのだろうと思うのです。長々話すと本当のように聞こえなくなってしまうから。

病気の時、特に周りの友達との連絡が途絶えがちになると、お子さんは自分の生活の中で起きる出来事を、すべて自分の価値観で判断してしまいがちです。そしてハッピーではないことばかりが頭に浮かんできます。
そういうときこそ、価値観の変換が必要だと思うのです。
そのためにはネット、読書、人との出会い、何がきっかけになるかはわからないけど、それがお子さんの憂鬱さを払拭する始まりになるはず。

 
「どうせ…」その言葉が出たら、お子さんは価値観の変化を必要としている時期。新しい価値観を取り込める工夫をしてあげてください。
長原恵子