病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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病気と一緒に生きていくこと
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長く病気を患っているお子さんにとって「明日」「将来」という時間軸が励みになること、たくさんありますね。
「あと何回点滴を頑張れば、おうちに帰れるかな?」
「今の治療が終わったら、体力をつけて秋から学校に行こう!」
「学校に行ったら、早く部活動にも参加したい!」

一方、「明日」や「将来」を思い浮かべる時、「恐怖」を伴い、決して楽しい希望や夢ばかり描くことができないお子さんもいらっしゃいます。
たとえば、がんのように「転移」「再発」という恐怖が、心のどこかにいつも巣食っていると、お子さんは手放しで、未来を語ることはできないかもしれません。2012年秋、私もがんの手術を受けた前後、しばらく考え込んだ時期があったので、そうしたお子さんの気持ちを決して他人事には思えません。
私の場合いろいろ考えた末に「たとえこの先、転移したとしても、その時自分の免疫力で何とかすれば、いいじゃないか…」と思うようになりました。
そして自分の死を突如意識した時、それまでの間に自分がしたいこと、成し遂げたいと思ったことは何なのかを考えると、とても今、読めない将来の不安に怯える時間などないと思うようになりました。そうした心の切り替わりの瞬間によって、幸い今は元気に過ごしておりますが、先日見た韓国ドラマの中で、非常に良い言葉があったので、ぜひ、がんの転移や再発に怯えるこどもたちにお伝えしたくて、今日は取り上げたいと思います。

日本では天海祐希さんが主人公で2005年に放映された「女王の教室」というドラマが、韓国で同名でリメイクされ、2013年に放映されました。小学校6年生の担任の先生と、そのクラスの生徒たちのやりとりを描いたドラマですが、私は日本版は見ていなくて、韓国版のDVDを見ました。

タイトル 「 女王の教室」
制作局 MBC
演出 イ・ドンユン
脚本 キム・ウォンソク キム・ウニ
プロデューサー キム・ホジン ジョン・スンフン パク・インソン
日本語字幕DVD発売元 ポニーキャニオン

クラス内での生徒同士の陰湿ないじめや、担任の先生の異常とも思えるような対応に、当初辟易する部分もありましたが、でも、生徒に扮する子役と担任の先生役のあまりにリアルで気迫のある演技に、つい最終回(第16回)まで見てしまいました。
担任の先生の執ったある行動に対して、教育庁は1年間停職の懲戒処分を命じましたが、生徒たちは事情聴取で自分たちが話した内容の本意が、正確に伝わらず、不当な処分が命じられたと考え、教育委員会に直談判に行こうとします。それを止める教員と生徒の間で押し問答になった際、担任の先生がやってきて、最後の授業を行いました。それは教壇を去る前に、生徒たちに大切なメッセージを伝えるためでした。
ちょうどドラマの59分頃から始まります。
脚本家のキム・ウォンソク氏、キム・ウニ氏の言葉は、もちろん担任の先生を演じるコ・ヒョンジョン氏の演技と共に登場しますが、日本語字幕としても美しい、良い言葉が連なっていました。

明日が不安なのは当然だけど、
そのために今日を無駄にするのは
最も愚かなことよ。
そのままじゃ、あなたたたちは将来、
恐怖に怯えて暮らすようになる。

この先も不安を煽り、恐怖を植え付ける人に
たくさん出会うわ。
“いい大学に行けないと成功しない”
“整形して美人にならないと嫌われる”
怖いでしょ?
明日のために、今日を犠牲にするの。

でも覚えておいて。
あなたたちが過ごす時は、
昨日でも明日でもなく、今この時間しかないの。

不安になったら今の自分を感じなさい。
目を閉じれば吹いてくる風、
胸に手を当てれば心臓の鼓動、
耳を傾ければ友達の笑い声が聞こえる。
未来に怯えて、目の前の大切なものを諦めてはダメよ。


引用ドラマ:
「女王の教室(韓国ドラマ)」第16回
脚本家:キム・ウォンソク キム・ウニ

水を打ったように静かな教室の中で、担任の先生の言葉を聞き入る生徒たち。それを遮るように「教壇に立つ資格はない」と教頭先生は言い、2人の先生が担任の先生の横を固めて、教室の外に連れ出そうとします。
しかし、担任の先生は毅然として、話を続けます。

夢がない?
目標が分からない?
それなら今の自分ができることを全力でやるの。
間違っても失敗してもいい。
全力で頑張れば、自分のことが分かり夢も見えてくるはずよ。


引用ドラマ:前掲ドラマ

「その辺でもうやめてください」と担任の先生は腕を取られそうになりますが、それを振り払い「まだ終わっていません」と先生は話を続けます。

自分がすべきことから逃げず、
幸せを探して楽しく生きなさい。

そして自分と同じように、友達の幸せも忘れないように。
自分を大切にし、友達も大切にしなさい。
ベストを尽くして、友達と一緒に、
今日を幸せに生きられるように。


引用ドラマ:前掲ドラマ

言い終わると、担任の先生は静かに、毅然と自分で教室の外に出ていきます。
きっと、こどもだけでなく、大人にも通じるところが大いにあると思います。

そして、どんな病気を抱えていたとしても、そのこどもにとっては、それが唯一の自分の人生。今の時間が、積み重なって、そのこどもの人生につながっているはず。たとえ今は逆境であっても、大きくなって人生を振り返った時に、自分がそこで泣いていたり、逃げていたり、辛いことしか、思い出しかないのは、何とも悲しすぎますね。
でもきっと今の時間を大切にできれば、新しい何かが見えてくるはず。

先日お目にかかったあるお母様が、お子さんと同じお部屋に入院されていたあるお子さんの姿をご覧になって、おっしゃっていました。
「あんなに大変な手術を乗り越えた自分を、誇りに思ってほしい…」
そのお子さんは、自分の家族以外の人がそんな風に自分を見ていてくれたなんで、きっと思ってもいなかったはず。でも、大変なことはいろいろあっても、それはどこかで誰かがちゃんと見ています。

 
たとえ大変な時であっても、今の時間を捨てないで、大事に思って過ごしていけば、それがお子さんの人生につながっていきます。 
2015/6/27  長原恵子