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家族の気持ちが行き詰まった時
不安・心配な気持ちと自律神経

生まれた時からお子さんが病気であった場合、ご家族の心の中からはずっと心配や不安が離れず、緊張し続けた日々だったと思います。
周囲の人々から「そんなに心配しないで」と言われても、お子さんの寝顔を見るたびに、押しつぶされそうな気持ちになることもあったかもしれません。
私が小児外科病棟で勤務していた頃、いつもいつも、不安で一杯になって面会しているお母様がいらっしゃいました。
その方の気持ちにちょっと触れただけで、涙腺が決壊してしまいそうな雰囲気で、どのように声をかけて良いのかわからず、当時、自分の未熟さと無力さをつくづく感じる日々でした。

「そんなに心配しないで…」という言葉は、ご本人にとっては気休めのような、薄っぺらな言葉に聞こえるのだと思います。そして心の中には、ちっとも届かないのだと思います。

でも「心配しすぎる」ことは、実はあなたの心と身体にとても大きな変化をもたらすのです。先日、安保徹先生の本を読んでいたら、次のような説明がありました。安保先生は、白血球に対する自律神経の支配について発見された世界的に高名な免疫学者です。講演会の休憩時間に直接お話をさせていただいたことがありましたが、とてもあたたかいお人柄の先生で、一般向けにわかりやすい本もたくさん書かれていらっしゃいます。

心と体は、つながっています。
心の働きの可能性は、未知数です。その働き方次第で、免疫をはじめとする体の機能も高まるのです。体の機能は、加齢と共に低下していきます。
でも、「心の力」=「免疫力」は60歳を超えても、著しく衰えることはありません。


引用文献:
安保徹「免疫力は衰えない」安保徹総監修『祝・還暦』(2007)
健康ジャーナル社, p.21


体の機能は衰えても、心の力は著しく衰えない、って良い響きを伴う言葉だと思いませんか?
でも、どうして心と体がつながっている、という風に言えるのか?
そこの部分が疑問になってきますよね。
安保先生は次のように、説明されています。

脳で感じる「不安」や「悲しみ」の気持ちは、自律神経を通じて、体中に伝わります。そして、体を緊張させて、やはり免疫の働きを悪くしてしまうのです。(略)免疫を働かせるために一番大切なことは、ストレスとうまくつきあっていくこと、というわけです。つまりは、「気の持ちよう」だと私は思っています。
医師なのに、そんな簡単な、きわめてあいまいかつ抽象的な分析でいいのかとご指摘を受けてしまいそうですが、結局それが真理だと思っています。

引用文献:
安保徹「免疫力は衰えない」安保徹総監修『祝・還暦』(2007)
健康ジャーナル社, p.20


気持ちが自律神経を通じて体中に伝わる、という表現は理解いただけると思います。
きっとあなたも、不安な気持ちが昂じて、ご自身の体調を崩された経験はお持ちのはず。もしかしたら、それは単に「気のせい」と片付けられていたかもしれないけど、本当は医学的な理由に基づくもの。
「自律神経」による指令を受けている様々な臓器・器官が、自律神経の指令によって変調を来たしているから、ということなのです。
臓器・器官の立場ではそれぞれが指令通りに忠実に働いているのですが、その忠実さが集まって長い間持続すると、ご本人にとっては心地良い状態ではない体調を生み出すことになってっしまうのです。

不安や心配が高まった状態では、自律神経(交感神経・副交感神経)のうち、交感神経が優位になっています。不安等が長く持続することは、交感神経優位の状態が長く続くことになりますが、このようなところにも影響してきます。

免疫細胞は、自律神経の影響を受けて増減します。交感神経優位のときは、リンパ球が減少します。リンパ球は主に、初期段階のがん細胞をやっつける免疫です。


引用文献:
安保徹「免疫力は衰えない」安保徹総監修『祝・還暦』(2007)
健康ジャーナル社, p.20


「不安」「心配」に思うことは自然な心の流れであり、決して悪いことではありません。でも、あまりにもそのような状態が続くことは、あなたの身体を蝕んでいくことになってしまいます。
もしもあなたのお子さんの病気のことを不安に思いすぎて、心配しすぎてあなたが病気になってしまったら、お子さんはどんなに悲しく思うことでしょうか。
 
不安や心配に思う気持ちの過程を、和らげていけるようなお手伝いを、カウンセリングを通して行っていきたいなと思っています……。
2013/12/22  長原恵子