病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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家族の気持ちが行き詰まった時
自分で守る前頭葉と神経回路

「備えあれば憂いなし」という言葉があります。確かにこれから先のことをいろいろと想定して、いろいろと備えることは役に立ちます。
でも、その想定が、かえって自分を苦しめる時があります。
特にお子さんの病気のことであれこれと思い悩んだ時には、どうしても悪い方ばかり考えてしまいがちです。
回復の進み具合が、自分の思ったようにはいかない時、もっと他に良い治療法があるはずなのではないか、もっと別の薬を使ったほうが良いのではないか、今かかっている病院で良いのだろうか…と考えているうち、それがやがて怒りに変わることもあります。
また、お子さんがもうこれ以上治らないのではないか…と不安になったり、恐怖を感じることもあるかもしれません。
考えることがそうした深みにはまっていくと、一人ではなかなか抜け出すことができず、憂鬱な時間が増えていきます。
それは決して「気のせい」「自分の思いこみ」なのではなくて、言葉によって脳の機能的な側面が変化を受けているからなのです。
アメリカの脳神経学者であるアンドリュー・ニューバーグ先生は、それをわかりやすく、次のように記されています。

怒りを表す言葉は脳に危険信号を送り、特に前頭葉にある論理的思考・判断力の機能中枢のはたらきを抑制してしまう。
一方、恐れを感じさせる言葉 ―貧困、病気、孤独、死など― も多くの神経中枢に刺激を与えるが、その場合、否定的な言葉とは異なる神経活動が生じる。

大脳辺縁系にある扁桃体が引き起こす「闘争・逃走反応(fight-or-flight reaction)」によって、脳は最悪の結果ばかりを想定しながら、実際に起きるのかもわからない物事にどう対処すればいいのかを繰り返し練習するようになるのだ。
つまり恐ろしい出来事を想像し続けることで、自分自身に大きな負担をかけてしまうのである。


引用文献:
アンドリュー・ニューバーグ, マーク・ロバート・ウォルドマン著, 川田志津訳(2014)『心をつなげる』東洋出版, pp.32-33

「頭にきた!!」時に、うまく考えがまとまらないことは、どなたも経験されていると思いますが、それは前頭葉のはたらきが抑制されてしまうからなのですね。
前頭葉を守り、前頭葉がしっかりと活動するにはどうすれば良いのでしょうか。

否定的な考えや恐れを断ち切ることで、脳のはたらきを維持することができる。ポジティブな目標に意識を向け直し、積極的な態度を持ち続けることで、取り越し苦労をしやすい前頭葉の一部を鍛えられるのだ。

そして幸福感、充実感、満足感に関与する神経回路を形成するだけでなく、社会に対する意識や他者に対する共感力を向上させる神経回路をも鍛えることができる。
そこから理想的かつ効果的なコミュニケーションが花開くのだ。


引用文献: 前掲書, p. 33

心配しないでと言われても、それは非現実的。
親がこどもの病気を心配せずにはいられません。
でも、良くない方向へと考え続けることは、良くない事柄をあれこれと頭の中に思い浮かべることになります。
良くないことの連鎖が、あなたの頭の中を占拠するようになった時、あなたがお子さんへかける言葉はどんなものになるでしょうか。
お子さんがわくわくするような、楽しくなるような言葉がふと思い付くわけにはいかないはず。

良くないことばかり頭に浮かぶ時は、一休みして、気分転換が必要です。
お子様のことで行き詰まりを感じていたあるお母様は、こんな風におっしゃっていました。
「家で自分でコーヒーを淹れて飲めば、実費何十円かで済むはず。
でも、あえて外のお店でコーヒーを飲むと、気持ちが切り替わって、しゃんとする。それは私にとっての小さな贅沢。
人の目もあるから、きちんとして出かけようという気にもなる。
誰かが<自分のために淹れてくれたコーヒー>はおいしい。
たとえそれが安いコーヒーであっても。
そして、しばらくそこで雑誌を読んだり、ぼんやりして時間を過ごすと、
<まあ、いいか。またこどもと向き合って、頑張ろう!>
という気持ちになって来る。 」

そのお母様にとって、外のお店で飲む一杯のコーヒーは、前頭葉の働きを守り、気持ちを守る上で大きな働きを果たしていたのだと思います。
カフェインによる精神高揚云々…そういう問題ではありません。
いつもの日常の中で、自分を大事にする時間を設けることが、小さな救いとなって、毎日が続いて行くのです。
そうやってあなたが難局をうまく乗り切っていく姿を、あなたのお子さんもきっと頼もしく思っているはずです。

 
負の思考の連鎖を断ち切るのはほんのちょっとのきっかけ。
そして、それができるのは他でもないあなた自身です。  
長原恵子