病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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家族の気持ちが行き詰まった時
年長さんの背中を見て育つ大人

お子さんが発達障害と診断された時、療育施設に通わせたいと思っても、自分たちが希望するような頻度や時間で行われていなかったり、順番待ちですぐには通えなかったり…。
何かこどものためにできることはないか、特別なプログラムはないかと探しあてたところが、自宅からとても場所が遠くて、通うのは難しくて、どうしたらいいんだろうかと、途方に暮れるご家族もいらっしゃるかもしれません。
でも、一番近くにいるご家族の普段の関わりが、そのお子さんにとって、何より大きな力を生み出す原動力になるのではないかなあ…と思える本がありました。『発達障害のある子のこころを育てる―3つ子の子育てハッピー絵日記』です。

こちら、三つ子のお母様「じゅんさん」が書かれたエッセイ集です。じゅんさんのイラストも添えられているので、読みやすい本ですよ。
三つ子ちゃんは男の子2人、女の子1人のごきょうだいですが、そのうち長男まぼくんはアスペルガー症候群、次男たんたんくんは脳性まひと自閉症、そして長女あーちゃんはそうした発達障害はなく生まれました。

日々の暮らしの中でじゅんさんが気づかれたことが、いろいろなテーマで書かれているのですが、その中で、特に印象的なところがありました。

保育園の年長さんになったころ、まぼくん本人にもまだ病名を知らせず、同じクラスのこどもたちも当然病名を知らないことから、担任の先生も悩んでいた時のお話です。まぼくんのアスペルガー症候群の特性を理解して、言動に対応していくうえで、まぼくんだけ特別扱いされるように見えて、不公平感をもたらしてしまう懸念が、先生の悩みの種でした。

でも、それは同じ保育園に通う三つ子の長女あーちゃんの姿が、突破口になったのです。大人の悩みをこどもが解決? どうして?

担任の先生が思い切った口調で
こう言った。
「第2のあーちゃんを育てていくことにしました」

(略)

あーちゃんの姿を見て、
何か起きたときに誰かをいさめるのではなく、
まわりをほめればいいんだと気づいたとのこと。

まぼが順番を待てなくて騒いだら、
それをたしなめるのではなく、譲ってくれた子をめちゃくちゃ
ほめる。
代替案を出してくれる子がいたら、その発想に感心してほめる。
それを見てまぼが「やっぱり先にいいよ」と気づけたら、なおラッキー。

「まわりをほめていいムードに巻き込んじゃうあーちゃんのやり方は、ぎこちなさも無理な感じも全くないので……」
と感心する先生。

そりゃ、そうだ。
お腹の中からずっと一緒で、まぼの取り扱いはプロ級だもの。

「だから、こういう感覚を育てていけばいいんだと思ったんです。まぼくんを変えるんじゃなくて、クラスのみんなを育てていくことにします。」


引用文献:
じゅん(2012)『発達障害のある子のこころを育てる―3つ子の子育てハッピー絵日記』学研教育出版, pp.34-35

もしかしたら、大人は偏った見方をしているのかもしれませんね。
大人は何かこうあるべきだ、みたいな姿が刷り込みされがち。だから、そうではないことにすごく目が行ってしまい、何とかそれを矯正しようとしてしまいます。もちろん命にかかわるような危険や事故にかかわることは、すぐに是正するべき。
でも、そうではないような状況の中では、一歩引いて考えてみると…そこで起きている事象は、矯正必要なことだけで埋め尽くされているわけではない、と気づくことができます。特定のこどもに対する「だめでしょ」という否定・叱責ではなく、その他大勢のこどもに対する「できたのね」という肯定・称賛があることにより、その場の雰囲気がずいぶん和みます。
そこで、アスペルガーのお子さんが「他の子はどうして、ほめられたのかな?」って思えたら、ホントにプラスの流れが生まれます。

年長さんのあーちゃん、すごいなあ。
まぼくんやたんたんくんと一緒に暮らすうちに、そういう対人関係の極意をすっかり身につけている。きっとそれは、じゅんさんやご主人とこどもたちによって生み出される家庭の雰囲気が、そうした学びが身につくようなものを醸し出しているからだと思うけど…。

じゅんさんのプロフィールによると、幼稚園教諭と保育士免許を持っていらっしゃるそうです。だから多くの人は「じゅんさんは特別だ。こどもの教育のプロフェッショナルな教育を受けているから、そういう関わりができるんだ。」と思うかもしれません。でも、往々にして、必ずしも机上の学問が本当の現場にすべて活かせるとは、限らないもの。
きっと、免許や資格といったことだけでは語れない、その人なりのお人柄や価値観がとても影響しているように思います。ということは、こどもの教育を専攻していない人が親であったとしても、じゅんさんのご家庭のような関わりは真似できるはず。

じゅんさんも一人の人間ですから、落ち込んだり、いらいらしたり、切れそうにな時もあったことでしょう。でも、この本の中では随所に、じゅんさんのハッピーな気持ちが詰まっています。
それはなぜか? 見過ごしてしまいそうな日常の出来事の中に、気づきを得て、そこに喜びを感じること。大人がそう感じる雰囲気を家庭の中に漂わせていると、こどもにも大きな影響を与えるのですね。生まれてたった数年のうちにお嬢さんが、深い学びを得ているように。あーちゃんは教えられたのではなくて、自分で学び取ったのだと思います。

きょういくって、教え育てることなのではなくて、共に育つってことなんですね。きっと。じゅんさんの本によって、病気のこどもとのかかわり、そしてそのこどもと一緒に暮らすきょうだいのこと…いろんなことを考えるきっかけになりました。

 

閉塞感でいっぱいの時は、自分の視点を変えて、考え方をちょっと変えてみてくださいね。きっと新たな気づきがあるはず。     

長原恵子