病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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家族の気持ちが行き詰まった時
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お子さんが病気で入院や手術が必要になった場合、ご両親どちらもがお子さんのことを心配しています。決して面会に来る回数や、病院でお子さんと共に過ごす時間の長短が、愛情の多い少ないを表すものではありません。しかしながら、どうしてもお仕事の都合や家庭の事情などにより、どちらか一方が多く面会に来て、病院で過ごす時間が多い、という状況は起こってしまいます。
面会時間が日中の時間帯に設定されている病院等では、お母様が面会に来られることが多いため、お父様の気持ちはなかなか計り知れない部分が多いところです。
でも、最近、私はお父様からお話を伺う機会が増えてきました。その中で、お父様は、お母様との立場とは少し違った視点でお子さんのことを案じていることが多いのだと、気付くことができました。その視点はお子さんだけでなく、家族全体にとっても、非常に大事な視点です。お父様とお母様、それぞれ違った視点を持っているからこそ、お子さんへの関わり方に広がりが生まれるとも言えるでしょう。

こちら
でご紹介した奥山佳恵さんの本『生きてるだけで100点満点!』の巻末に、ご主人の稲葉功次郎さんの気持ちが、綴られていました。
ご夫婦の次男、美良生(みらい)くんはダウン症で、心室中隔欠損(心臓の2階建ての4つのお部屋のうち、1階のお部屋2つの間を隔てている壁に穴が開いている病気のことです)で生後半年の頃に手術が必要になりましたが、ちょうどその頃の気持ちを回想された言葉で、とても素敵な言葉があったのです。

僕はこれまで困難にぶち当たると、努力して克服したり、迂回したり、ときには見ない振りをして逃げたりしながら越えてきた。
ところが、美良生くんのダウン症は、生まれて初めて出会った
「自分ではどうにもできない壁」だ。
僕の前にある壁なら何としてでも乗り越えるけれど、悔しいことに僕の前にはないのだ。

だったら、美良生が壁を乗り越えられるよう、責任を持って手助けすればいい。

また、万に一つもないとは思うが、もし佳恵が育児放棄をしても、美良生を嫌いになっても、今の僕には自分の責任において、どんなことがあっても美良生を育て上げる覚悟ができている。

僕は、手術室から出て来た美良生を見て、やっと父としての覚悟を固めることができたのだ。

今思えば、僕はあのときに初めて「ダウン症児の父親」になったのだと思う。
それは、美良生くんが生まれてから半年ほど経った頃のことだった。


引用文献:
稲葉功次郎「ダウン症児の父親になった日」
奥山佳恵(2015)『生きてるだけで100点満点!』ワニブックス, pp.202-203

確かに、人それぞれ、得意なこと、不得意な能力には様々な違いがあるけれど、どんな風にしたら、本人がその壁を乗り越えていけるか、考え、手助けをするって、いい考えだなあと思います。
何もかもできることを目指すのではなくて、その人にあった、その人らしさが発揮できるようなことを考えて、手助けすること…。
それは、病気の受容と新しい踏み出しの一歩になるのではないかなと思うのです。

そしてお父様は、美良生くんのお兄ちゃんに対する心配りもしっかりと行っていました。病気のお子さんがいらっしゃると、どうしても病気のお子さんをお世話する時間が実質的に長くなります。そして気持ちの上でも、病気のお子さんに関わる考え事が増えていきます。でも、ご両親にとっては健康なお子さんも、病気のお子さんもどちらも大切な存在であることに、変わりはないですものね。

お父様は、美良生くんがゆっくり自分のペースで成長することに喜びを感じつつも、それがお兄ちゃんにとってはどうであるか、長期的な視座に立つとどうであるか、考えていらっしゃったのです。

ダウン症は時間の流れがとてもゆっくりとしている。そのゆっくりのおかげで、愛らしく可愛い期間が長くて、とてもしあわせな思いをさせてもらっている。

だけど、あまりにもゆっくりゆっくり進んでいくと僕らの方がどんどん年取って、やり残しがたくさんできてしまうんじゃないかと、ちょっと心配にもなる。

それはすなわち、兄の空良に負担をかけることに繋がるからだ。

家にいると主役はいつも美良生。
空良が主役になることは少なくなった。
だけど、まだ空良も小学生で甘えたい年頃のはず。

だから空良と2人で出かける時間を作るようにしているし、その時間を大事にしている。2人で富士山に登ったり、バイクでツーリングしたり。

子ども孝行というよりも、空良が将来父親になったときに、お父さんはどうあればいいのか、父親像に迷わないようにしてあげたいと思うから。


引用文献:前掲書, p.205

お子さんが小さなうちから、自分が一人の人間として大事に思われていることを実感できる経験を得ることは、何年、あるいは何十年も経ってからも、思い出し、役に立つ日が来ますね。きっと。

最後に、僕は子どもの頃から、いつも「ステキ」を目指していた。ファッションも、心も、生き方も、ステキな大人になれるよう生きてきた。

そしてこれからは、美良生くんを立派に育てることが、僕のステキな生き方だと思っている。


引用文献:前掲書, p.207

素敵な生き方って、自分の立ち位置がわかっていて、自分にとって大切な人(もの)は何かが明確にわかっていて、それをもっと大切にするためには、どうすればいいかわかって、実行しているということなのかな…。

 

家族全体を俯瞰して見ることにより、日の十分当たっていなかった部分にも光が差し込み、全体がうまく進むのだと思います。    

長原恵子