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家族の気持ちが行き詰まった時
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今日はこちらでご紹介したサユさんのお母様のお話を取り上げたいと思います。サユさんのお母様は女優・歌手であり、現在は母校の短大で客員教授としてキャリア教育も担当されている菊池桃子さんです。桃子さんと同世代の私は、まさに桃子さんがアイドルとしてスポットライトを浴びていた頃を思い起こすことがたくさんあります。数年前には朝の情報テレビ番組にも曜日パーソナリティーとしてレギュラー登場されていましたが、爽やかな感じはちっとも変わらないですね。
赤ちゃんの頃、脳梗塞と診断されたサユさんが遂げていった心の成長は目をみはるものがありますが(その詳細はこちらをクリック)、本人の無限の可能性の芽を引き出すように、育てていった「母」としての桃子さんの考え方も、とっても良いなあと思うところがあったので、取り上げたいと思います。

桃子さんの長女サユさんが7か月の頃、脳梗塞の痕がみられると診断された時、診察室で涙が溢れ出た桃子さんに、医師はこう声をかけました。

「(略)ご自身や何かを責めることはやめてください。
むしろ、これからのことを考えましょう。
お母さん、今とても辛そうな顔をされていますが、辛い顔は
しないでください。辛いのはお母さんではないですよ。
娘さん本人です。
サポートする人がナーパスになっている場合ではありません」

そう年配の先生に言われ、「しっかり!」と
自分に言い聞かせました。

この子が大きくなったとき、辛いよ、怖いよと頼ってきたときに、わたしが泣いていたら、きっと不安になるでしょう。
わたしは、この子のそばにいて「大丈夫だよ」と笑顔でいなくてはならないのだと、この診察室で心に決めたのです。

引用文献:
菊池桃子(2015)『午後には陽のあたる場所』扶桑社, p.95

あまりに衝撃が強いと、人はそこから抜け出せず、周りに目を向けられなくなってしまうけれども、そこで耳にした医師の言葉から、はっと気付いた桃子さん。とても力強さがある方ですね。

この日から、新しい親子の関係がつくられていったと思います。サユ自身が病気を理解するまでは、わたしがマッサージとストレッチをしてリハビリを助けます。
時々母に来てもらい、子育ての手伝いをお願いすることもありました。

引用文献:前掲書, p.96

桃子さんはサユさんの育児を通して、病気があるお子さんの成長、就学に立ちはだかる様々な現状について、保護者の立場から自ら経験していくようになりました。そしてどのような不自由さを持つこどもであっても、人として成長し、社会へ出ていける仕組みについて考えていかれるようになっていったのです。
桃子さんは40歳の時に大学院修士課程に進学されました。そこで取り組まれた研究は、特別支援教育を受けているお子さんと保護者、普通教育を受けている健康なお子さんと保護者が、教育に期待するものに関する検証と、障がいの有無に関わらず、皆が同じクラスで学ぶ教育(インクルーシブ教育)が、将来のキャリア形成に及ぼす影響を保護者はどう考えるのか、という意識調査だそうです。
サユさんの育児を通して直面した経験に端を発した、このテーマ。
そして「ああ、大変だ」「今の社会、教育の仕組みは、まだまだこんなに冷たいところがある」と不平を漏らして終わらすのではなく、問題意識へと変え、行動に移していったことって、本当にすごいですね。学業、育児、家事、外でのお仕事…、桃子さんは猛烈に忙しかったはずですが、忙しさに伴いますます必要とされる集中力や実行力を、自分の味方にしていったのだろうと思います。

悩みがなさそうなどと言われることもあるのですが、根本的には幼少期からネガティブな部分を抱えているので、一つのことだけをやっていると自分に厳しくダメ出しをしてしまい、楽観的に考えられなくなるところがあるのです。

つまり、やることが一つしかないと、落ち込んだときに頭の切り替えがうまくできずに落ち込んだままになってしまう……という悪循環に陥るのです。

そんなときにもう一つの世界があると、頭をうまく切り替えられて、落ち込みすぎないように工夫ができるようになります。

子育てもずいぶんラクになった今、教育関連の仕事と芸能の仕事があるのは、とてもありがたいこと。切り替えのスイッチを上手に使うことで、自分を苦しめるような事柄もうまく調整できているのです。

(略)今後も、二足のわらじは続けていこうと思います。自分の性格を理解したうえで、工夫ができるようになってきたことは、人生の午後に入った者の余裕なのでしょうか。

引用文献:前掲書, pp.158-159

「人生の午後に入った者」その考え方は、桃子さんが39歳の夏、これから自分の人生をどう歩むべきかと考えていた頃に出会ったキャリアカウンセラーから聞いた、心理学者カール・グフタス・ユング氏の話に遡ります。人の人生を太陽の運行になぞらえてみた時、太陽の一番高い時、すなわち正午のあたりが40歳前後だとするならば、それ以降の人生は正午を過ぎた後の人生だとする考え方です。

人生の午前中に陽のあたっていた場所とは違う場所に、午後には陽があたる。それは、わたしの中年期以降の人生をきっと楽しいものにしてくれるだろう、そう確信しました。

もともと自分に自信があるタイプではないし、迷い、涙することも多い。そんなわたしが人生の午後に心地よい陽射しをあびている充実した日々。さらに気持ちのよい陽だまりに身を委ねるために、もっと頑張ろう。もっともっと頑張ろう。

引用文献:前掲書, p.5

人によっては、正午を過ぎた人生を「斜陽」と感じるかもしれない。でもそれはなんだかとっても暗いイメージがついてきますね。でも「陽があたる場所が変わるだけ」「これまでと違う場所に陽があたる」のだと考えるって、とても良い捉え方だなあと思います。
同じ言葉であったとしても、その捉え方によって人の気持ちは変わり、そこから生まれる行動が変わっていくのですから…。
桃子さん、身体と心を大事にして、いつまでもお元気で活躍してほしいなあ。

 
物事の捉え方によって変わってくる行動、それが自分の人生をより幸せに導くのだろうと思います。      
長原恵子
 
関連のあるページ(菊池桃子さん)
「あえて雪道を歩こうとした少女」
「気持ちを切り替えて、生まれた新しい道」※本ページ