その自然療法のひとつが専門家の女性の指導によるイメージ療法だったが、最初はそれがうまくいかなかった。
「あの先生はいい人です」
と、彼は電話でわたしに報告してきた。
「でも、ぼくの苦手な暴力的なイメージばかりを指示するんですよ。自己免疫を起こしている白血球をレーザー光線でやっつけろとかね。からだに暴力を加えることは、うんざりするほどやってきました。ぼくに必要なのは、もっとやさしいイメージだと思うんです」
やがて、彼は自分にぴったりなイメージを思いついた。
攻撃をしない白血球(サプレッサーT細胞)が白バイに乗った警官であり、その警官がサイドカーに赤血球と血小板を乗せて血流中を走り、攻撃してくる白血球から護衛するというイメージである。そのイメージはひじょうに効果をあげ、彼の自然療法の中心的な部分を占めるようになって、ついには自己免疫疾患の長期寛解に成功したのだった。
より意識的な、目的をもった白昼夢をみることによって、また、とくにイメージを喚起しやすい感情的な反応に注意を払うことによって、イメージの力をからだにおよぼす訓練ができる。
外傷でものどの痛みでもいい、だれもが経験する傷害の治癒を促進するために、ふだんからイメージの力を使うようにこころがけていただきたい。そうすれば、重い病気になって治癒力を総動員しなければならなくなったときに必ず役立つ。
引用文献:
アンドルー・ワイル著, 上野圭一(1995)『癒す心、治る力 自発的治癒とはなにか』角川書店, p.282 |