病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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お子さんの腎臓の機能が低下して、透析が必要になった時、いろいろと不便に感じることもあると思いますが、今日はそのような方へお届けしたいお話があります。
最近、透析を必要とされている方のご家族が書かれた本を読みました。
桜井友紀さんの『ルンルン海外透析旅行 透析患者だって旅に出る』です。楽しさが弾んでいるような感じを受ける題名でしょう。実際、読み進めてみると、元気が溢れ出ている本でした。
大人の透析患者さんのお話なのですけれど、ご本人やそのご家族が病気と一緒に生きていくってどういうことなのか、生活を楽しむってどういうことなのか、とても参考になる本でした。
友紀さんの旦那様は心筋梗塞で倒れて手術を受けられた3年後、今度は腎不全で透析を始めることになったのだそうです。ご本人も大変だったと思いますが、友紀さんも心労が絶えなかっただろうと思います。
そうした気持ちを次のように綴られていらっしゃいます。

しかし、仮に長生きが保証されても、透析患者にとっては切ない暮らしだ。
一日おきの透析、しかも毎回四時間!それじゃもう自由はないということ?マスオさんに心境を聞く以前に、私の人生が真っ暗になった。それでも生きていられるからいい、とは思わなかった。

こんな人生は“生きている”とは言えないと思った。
ただ“生存している”に過ぎないじゃないの。(略)
どう生きるかは問題外だった。面白くもない人生をこうして生きつないで、いつか面白くもない人生に終わりがくるだけだ。


引用文献:
桜井友紀(2002)『ルンルン海外透析旅行 透析患者だって旅に出る』清流出版, p.66

さて、そのような生活は透析が始まってから3年目、初めてドライブされたこをきっかけに、徐々に変わっていきました。季節による木や花の変化、田んぼの変化、工事中の町の様子、そうした移り変わりが友紀さんと旦那様の生活に、新しい風を吹き込んだのだそうです。
そして何より、そうしたお出かけによって旦那様が見違えるように「元気」になることを、友紀さんは実感されていました。
やがて国内旅行、泊りがけの旅行を経て、ついに海外旅行にまで出かけることになったのです。

私たちの旅は、無風地帯の生活に風を入れる旅なのだ。
一日おきに病院と家を往復する暮らし。鉄の鎖で病院に縛られた生活。新しい風など吹くかはずもないと思っていたが、そんな日々にも風が立つ。知らない風景、見知らぬ出会い、そうした風がもたらす新しい人生!※1

人生は一回限り。したいことをして、精一杯生きなければウソよ!透析患者だっていまどきは、どこへでも自由にいける時代になったのよ。あなたの腎臓、世界中の病院に預けてあると思えばいいじゃないの!※2


引用文献:
※1 前掲書, p.185
※2 前掲書, p.25

「世界中の病院」が身体の一部。
そんな風に思えると、何かすごく解放された気分になりませんか?
そうした言葉は決してつい口から出た軽い言葉ではありません。
現地で必要な透析の手配を、出発前に十分行っていらっしゃいました。そうした具体的な事柄がしっかり書かれています。今から10年以上前のことではありますが、今これから出かけようと思うご家族の参考になると思います。

何もかもうまくいって、間延びした人生なんて面白くないかも。マスオさんの病気のおかげで、ときどきドッキリする。
間の抜けたスープに胡椒を利かせたみたいだ。お陰で生きていることがたまらなく美味になる。
今日も生きている。
今日も元気だ。
さあ、今日も思いっきり、素敵にエンジョイ!


引用文献:
前掲書, p.229

自分の一日を引き立てるのも、沈めてしまうのも、それは自分の病気のせいではなくて、自分の気持ち次第…そのように思いました。

 
あなたのお子さんも「たまらなく美味」と思えるような胡椒の一振りがきっとあるはず。それが早く見つかりますように… 
2014/2/22  長原恵子