病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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飛行機と第VIII因子

私たちの身体は本当に良くできているものです。もしも血管が破れてそこから血液が漏れだすと、血を止めようと身体は頑張ります。まず血管にできた穴をふさごうとします。穴をふさぐふたのようなものが血小板です。血小板はいち早く駆けつけてくれる頼もしい仲間です。

でも、そのふただけでは、心許ないわけです。そのため、私たちの身体の中では、血小板のふたを、もっと強固なものにするために、糊つきのひもで、そのふたを、ぐるぐるとまとめようとしてくれます。凝固因子と呼ばれるものが、その役割を果たします。

こうして2段階によって、止血が十分になるのですが、お子さんの中には、この凝固因子のうち第VIII因子がない、またはあってもはたらきが不十分なお子さんがいらっしゃいます。その病気は血友病Aと言われます。

アメリカの医師 B・S・シーゲル先生の本の中に、とてもポジティブな血友病Aのお子さんの話が紹介されていました。クリーブランド小児病院のカレン・オルネス先生が発表されたお子さんのお話です。
その少年は自分の心の力も総動員して、医師の治療を受けていたのです。
「いつもいつも、自分は治療をされる側」ではなく。
「具合が悪い時はいつも先生にお任せ」そんな姿勢でもなく。

イメージを思い浮かべる能力を、エリクソンほど十分に備えている大人は少ない。だがほとんどの子供にはこの能力が備わっている。子供はまだ「現実」と「想像」とをはっきり区別していないので、視覚化することが大人より容易なのだ。

精神科学研究所が主催した会議の席上、クリーブランドの小児病院のカレン・オルネス医師は、小児がん、ぜんそく、慢性関節リウマチ、血友病といった慢性疾患の子供たちにほどこした治療について述べた。

ある少年は重い血友病のため、車椅子に頼りきりの状態だったが、彼はイメージを思い浮かべることで痛みをコントロールし、
「血が出るのを止める」ことを教えられた。
少年は自分の血管の中を飛行機で飛び、体に欠けている血液凝固因子の第八因子を、出血を止める必要のある個所に投下しているところを想像した。
また、何回もの手術を受けなければならなかった別の男の子は、バイオフィードバックの体温モニターを使って、痛みをコントロールする方法を学んだ。太陽を浴びながら座っているところを想像すると、体温が上がることがモニターに表われる。これによって、彼は体温以外の身体機能も自分でコントロールできることを理解した。

こうしてこの小児病院の子供たちは、痛みや体温のほか、皮膚の電気抵抗、血圧、経皮的組織の酸素飽和度、唾液の免疫グロブリン産生といったさまざまな自律的なプロセスまでコントロールできるようになった。

引用文献:
B・S・シーゲル著, 相原真理子訳(1993)『シーゲル博士の心の健康法』新潮社, pp.175-176

同じ治療を受けるとしても、自分の気持ちでその結果が変わってくる…そんな可能性が少しでもあるのであれば、治療の時間はチャンスの時間だと言えます。「あぁ嫌だなあ」そう思うのではなくて、「自分には何ができるんだろう」それを探していくことは、病気と長い付き合いが必要なお子さんにとって、転機になるような気がいたします。

 
お子さんの心の力も動員して、治療にもっと効果が表れますように…。
2014/3/17  長原恵子