イメージを思い浮かべる能力を、エリクソンほど十分に備えている大人は少ない。だがほとんどの子供にはこの能力が備わっている。子供はまだ「現実」と「想像」とをはっきり区別していないので、視覚化することが大人より容易なのだ。
精神科学研究所が主催した会議の席上、クリーブランドの小児病院のカレン・オルネス医師は、小児がん、ぜんそく、慢性関節リウマチ、血友病といった慢性疾患の子供たちにほどこした治療について述べた。
ある少年は重い血友病のため、車椅子に頼りきりの状態だったが、彼はイメージを思い浮かべることで痛みをコントロールし、
「血が出るのを止める」ことを教えられた。
少年は自分の血管の中を飛行機で飛び、体に欠けている血液凝固因子の第八因子を、出血を止める必要のある個所に投下しているところを想像した。
また、何回もの手術を受けなければならなかった別の男の子は、バイオフィードバックの体温モニターを使って、痛みをコントロールする方法を学んだ。太陽を浴びながら座っているところを想像すると、体温が上がることがモニターに表われる。これによって、彼は体温以外の身体機能も自分でコントロールできることを理解した。
こうしてこの小児病院の子供たちは、痛みや体温のほか、皮膚の電気抵抗、血圧、経皮的組織の酸素飽和度、唾液の免疫グロブリン産生といったさまざまな自律的なプロセスまでコントロールできるようになった。
引用文献:
B・S・シーゲル著, 相原真理子訳(1993)『シーゲル博士の心の健康法』新潮社, pp.175-176 |