病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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病気のこどもにとって、治療はどうしても受け身になってしまいがちです。医師が提案した治療方針、親が決断し、承諾し始まる治療。それは医師の立場からその医師が知りうる現代医学の中で最善と思われる方針を提案するのであり、親の立場でもこどもに良かれと思って決断するものです。しかしながら「自分がどうしたいか」といったこどもの立場からの意思が必ずしも反映されるものではありません。赤ちゃんならまだしも、ある程度自分で考えて決めることのできるようになった年齢のお子さんにとって、不本意と思える治療もあるでしょう。自分の気持ちとはかけ離れたところで物事がどんどん決まり、進んで行くことに対して、時には何か釈然としない思いを抱えたままになってしまうお子さんもいます。でも、もし自分の意思による行動が自分自身を良い方向へと変える力になっていくと実感できたとしたら、お子さんはどんなにか嬉しいことでしょうか。

アメリカのパトリシア・ノーリス先生は患者さん本人が持つ自分の思考イメージによって、本人の身体の仕組みを変えて行こうとする「バイオフィードバック」に取り組む先生ですが、バイオフィードバックによって病気に立ち向かったホジキン病のある少女は次のように語ったのだそうです。

「がんを治したことよりも、こんなふうに自分を変えられたということで、前よりもずっと自分が好きになったわ」


引用文献:
パトリシア・ノーリス「癒しー子どもたちから学ぶこと」
R.カールソン, B. シールド著, 上野圭一訳(1999)
『癒しのメッセージ ー現代のヒーラーたちが語るやすらぎと治癒』春秋社, p.237

学校に思うように通えなかったり、体育の授業を見学したり、校外授業をお休みしたり、自分のできないことばかりに目がいくようなモードに入ってしまったお子さんにとって、自分のことをもっと好きになれる機会ってとても少ないのだと思います。
そんなお子さんが自分で自分を好きになるということは、人生の中で大転換です。自分のやってきたこと、そこに関わる大変だったこと、自分の感情、そこにかけてきた努力、そしてそこにかかった時間、そのすべてを自分が肯定的に認め、「ああよくやった」と満足感に充たされることにより、自分で自分を好きになれるのでしょうから…。
そうした思いと共に、自分の身体の調子も上向きに変わっているのだとしたら、こんなに嬉しいことはないですよね。

長期にわたる病気、それと付き合うためには、お子さんが今の自分に自信をもつことが分岐点になるような気がいたします。

 
自分を好きになることは、自己陶酔の世界に生きるといういみではありません。自分の人生を生きようとすることに前向きになること。
2014/12/4  長原恵子