病気と一緒に 生きていくこと
家族の気持ちが 行き詰まった時
アート・歴史から考えるこどもの生
先週、日本橋で映画「きっと、星のせいじゃない」を見てきました。 病気をテーマにした映画って、何か最初から陰のある悲恋で涙誘う…みたいなところ、好きじゃないなあと思っていましたが、この映画は前評判が良かったので、行ってみることにしました。確かに登場する俳優さんたちの演技は、すごくナチュラルで、それぞれの人物が抱える思い、それが苦悩であったり、ときめき(!)であったり、そうした様々な色合いのものが、とてもよく表現されていたように思ったので、原作本も読んでみることにしました。映画はもちろん時間制限があるから、原作本から少し変えられているところもあるけれど、大筋は同じ感じでした。 心に響く言葉があったので、ここで紹介したいと思います。 主人公ヘイゼル・グレイス・ランカスターは、今年17歳になるという少女。13歳の時にステージIVの甲状腺がんと診断され、手術、放射線、そして腫瘍が転移した肺には化学療法を行いましたが、効かず、新しい臨床試験に参加中です。学校は3年前退学しましたが、学力検定試験に合格して、今は地元の短大に籍を置いています。 家の中に閉じこもりがちの娘を案じたヘイゼルの母は、地元の米国聖公会の教会の地下室で、毎週水曜日に行われている若者のがん患者のサポートグループに参加してみるよう、勧めます。気が乗らないけれども、親を安心させるようなつもりで参加したヘイゼルでしたが、そこで17歳の青年オーガスタス・ウォーターズに出会いました。彼は1年半前に骨肉種で右足を切断しましたが、その後状態は落ち着いていたところでした。 そこでお互い何か惹かれあうものがあり、サポートグループの帰り際、オーガスタスはヘイゼルを自分の家に誘いました。そして在宅中の親にもきちんと彼女を紹介し、二人はオーガスタスの部屋に入りました。 「君の話を聞かせてくれよ」とオーガスタスが切り出すと、ヘイゼルは、自分の病気の話をしようとします。その時、オーガスタスは彼女の言葉をこう遮りました。
「いや、がんの話じゃなくて、君自身の話。 趣味、興味があること、ハマってること、 変なこだわりその他」 「んー」 「中身まで病気になったなんていわないでくれよ。 そういうやつは大勢知ってる。悲しくなる。 ほら、がんって勢いのある会社みたいだろ? 人をのみこんで乗っ取っていく。 だけど君はそう簡単にのこみまれてやるつもりはないだろ」
引用文献: ジョン・グリーン著, 金原瑞人・竹内茜訳(2013)『さよならを待つふたりのために』岩波書店, p.40
二人はこれをきっかけに、お互いを深く知ろうとしていきます。 オーガスタスの言う通りですね。 甲状腺がんはヘイゼルの肺に転移して大暴れしていたとしても、彼女の「こころの中」にまでは転移することは絶対にできないのですから。 がん細胞がいろんな臓器やリンパ節に転移しても、心にだけは転移しません。それはすべての人に共通することですから。