病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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主人公が病気になるドラマは、ともすると暗く深刻な感じになってしまいます。でも、そもそも病気はその人の一部に過ぎなくて、その人を語るうえで病気がすべてではありません。いろいろなことを感じたり、考えたり、病気ではない人と同じように、活き活きと生活しているわけです。
先日見た韓国ドラマ「嫉妬の化身」は、まさにそういうエネルギッシュなドラマです。こちらの主人公ピョ・ナリ(コン・ヒョジン)は、今はお天気キャスター、でも夢はアナウンサー。そして同じテレビ局記者のイ・ファシン(チョ・ジョンソク)が登場するラブコメディのドラマです。
男性のイ記者は乳がんがわかり、女性に混じって治療が始まる…という設定です。いろいろ考えさせられることの多いドラマだけど、楽しさも満載です。

タイトル 「嫉妬の化身〜恋の嵐は接近中!」
制作局 SBS(韓国)
演出 パク・シヌ
脚本 ソ・スクヒャン
制作年 2016年

さてこちら「嫉妬の化身」18話の中で「なるほどー」と思う言葉がありました。テレビ局SBCのアナウンサー選抜のため、局内試験が開催されることになり、もちろんぜひとも挑戦したいナリ。しかし当日朝の天気予報はコスモス畑からの中継なのです。現場からSBC局内の試験会場に移動するには時間が間に合わない…どうする? ナリも苦肉の策をとりましたが、イ記者のおかげで、確実に試験会場に間に合うことができたのです。そしてイ記者からの励ましとアドバイスのおかげもあり、ナリは試験で実力を発揮することができたのでした。
その夜、町の小さな食料品店の店先のテーブルで、ソフトクリームを食べながら、ナリがイ記者にお礼を伝える場面です。試験に合格するだろうかと不安がるナリに、イ記者は次のように言葉をかけました。

「人生に疑問符は禁止
 感嘆符だけ付けろ
 両方付けるのはもっとだめだ
 今回は必ず合格する!
 わかったな」
「嫉妬の化身 〜恋の嵐は接近中! 」
第18話より(17分過ぎに出てくる場面)
脚本 ソ・スクヒャン


もちろん、自分のやったことに振り返りは必要だし、「これで良かったのかなあ? いや、もっと違う方が良かった…」と疑問符を伴いながら、自問自答して改めて行くことは、大切なこと。

では感嘆符だけの人生とは一体どういうことか。日々の生活の中で、当たり前のように思っていたことに喜びを感じたり、感謝したり、気持ちが昂揚するような瞬間を何度も重ねるべきだということでしょうか?
でも病気の時は、自分の身体に自信を持てなくなることもあります。そして現状に対して不満の視線ばかり向けるようになるかもしれません。
「今迄、私の何が悪かったの?」「どうして私がこんな病気に?」
「これから自分はどうなっていくの?」 
それは時に自分に対する視線だけでなく、周囲への不満といった形の視線へ広がっていくことも大いにあるでしょう。

自分の中でネガティブモードの疑問符ばかりの自問自答を繰り返す時、決して自分からポジティブな答えは返ってきません。やがてたくさんの疑問符が自分の心の首を絞めることになって行く…。

そんな時、感嘆符への切り替えが必要なのだろうと思います。
感嘆符、それはとても嬉しい時、思いがけない喜びを得た時、そういう時につけるもの。そして、その言葉を発するということはすなわち、日常の中に喜びや感謝を見出す感性を、ずっと持ち続けているということですね。つまり、自分自身をネガティブモードから引き揚げていくことによって、感嘆符の言葉に囲まれて生きることができるのだ、と思うのです。

それでもやっぱり、自分のことばかり考えていると、閉塞感でいっぱいになってしまう時もある。そんな時は…周りに目を向けてみませんか?
たとえ自分の「心の中」は大雨注意報発令でも、自分の周りには、雲一つなく澄み渡った空、青い海が広がっていることもあるのだから。

Lana-Peace
こちら2017/7、神奈川県、江の島の海と空。

現在、いくつか掛け持ちで仕事をさせてもらっていますが、その一つのある病院には、長期入院のために地元の学校に通えないこどもたちが通う院内学級があります。お昼の時間になると病室で昼食を摂るため、こどもたちはいったん病室に戻るのですが、その時皆、実に楽しそうな様子です。そのこどもたちの集団とすれ違うたびに、私は彼ら、彼女らに敬意を払いたくなります。家から離れてすごす長期入院生活、中には点滴ポンプを押したり、車いすのこどももいるし、年齢も皆ばらばら。背景にある病気や治療もばらばら。だけど共通しているのは、たとえ病気であっても「学びたい!」「学校に行きたい!」「友だちと一緒に過ごしたい!」そういう気持ちがあること。

こどもたちの笑顔の裏にあるものは何…?
皆、心にあるものは違うけれども、皆、今朝よりも1つ、何か新しい学びを得ているのは一緒。昨日より今日、少しだけ新しくなった自分。でも、その「少しだけ」の時間の積み重ねが、こどもたちを成長させているんだろうなあ。
病気であっても、そんなこと関係なく感嘆符を増やす時間をたくさん持とうとしているこどもたち、その姿はとても神々しいし、力強いし、人として素晴らしいと思うのです。

 
感嘆符の葉っぱが1枚増えていくたびに、自分のネガティブモードの葉っぱが1枚落葉し、青々した木々になっていく。そういう生活は自分が作ることができるもの!
2017/10/10  長原恵子