病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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家族の気持ちが行き詰まった時
明日のことは思い悩むな

先日(2013/7/17)、アルフォンス・デーケン先生のキリスト教入門講座の2013年前期の最終講義がありました。そこではデーケン先生が1995年に大腸がんと診断され、それを知らされた時のお話で締めくくられました。

死について、生きているうちから学び、考えることの大切さを何十年も教えてこられたデーケン先生ですが、ご自身の病気のことを知らされた時、その晩、眠れなかったのだそうです。
それは死が怖い、という理由なのではなくて、やり遂げていないお仕事(死を考え、学ぶことによって、生きる時間を大切にすることを人々に教え広めていくための研究や原稿執筆)があることを、気にかけていらっしゃったからです。

眠れぬ夜を過ごした時に、聖書を開き、次の言葉を目にして、今日1日を精一杯生きていこうという気持ちになったのだそうです。

あなたがたのうちだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか。(略)

だから、明日のことまで思い悩むな。
明日のことは明日自らが思い悩む。
その日の苦労はその日だけで十分である。

引用文献:
マタイ6章27節, 34節
新共同訳(2012)『The Study Bible 新約聖書』日本聖書協会, pp.10-11

このお話をデーケン先生からうかがいながら、病気のお子さんのご両親のことが心に浮かびました。
あなたのお子さんが突然、何か病気を診断され、様々な治療が始まり、毎日毎日、心配でたまらない方もいらっしゃるでしょう。
あるいは長くお子さんが治療を受けているのに改善が見られず、途方に暮れている方もいらっしゃるかもしれません。
いずれの場合であっても心が大変疲弊し、辛い時間を長く過ごされてきたと思います。
今日のことだけでなく、これから先、一体どうなってしまうのかを考え始めると、混乱と疲弊が頭の中を占拠して、ぐるぐる巡ってしまうかもしれません。
そのような時に、マタイ6章27節、34節の言葉が力になると思いました。
決して、心配することや祈ることに意味がない、と言っているわけではありません。
「思い悩むな」という言葉の背景を私なりに考えてみました。
「あなたはこれまでもう、十分、いや、十分以上に悩み、苦しみ、ダメージを受けてきたはずなのだから、一休みをしながら進んでいく必要がありますよ。あなたにはそうするにふさわしい価値が十分あるのですから」という意味なのだろう…と、私は考えています。
病気のお子さんのご両親の、これまで背負ってきた苦悩に対するねぎらいと励ましを形にした言葉だと思っています。

 
あなたが、苦しい思いから解放され、お子さんと過ごす時間に束の間でも良いから安らぎが得られますように。
2013/7/21  長原恵子