病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
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最近、バーニー・シーゲル先生の『奇跡的治癒とはなにか―外科医が学んだ生還者たちの難病克服の秘訣』という本を読みました。
シーゲル先生はアメリカの医師です。外科医としてたくさんの患者さんを手術で救ってきた一方、どんなに努力をし、最善を尽くしても、救うことのできない場面を経験するうちに、自分の医師としてのあり方を考えるようになっていきました。そうして人が治るということの本質を見つめなおし、人の治ろうとする力を引き出すことについて、探求してこられてきた先生です。

さてシーゲル先生は、そのご本の中で、ご自身が生まれた時のことを振り返って、次のように記されています。

お産はひどい難産だった。初めのうち私の顔は鉗子のせいでひどく歪んでいた。(略)生まれて数ヵ月間、私の写真がないことも、これでなっとくできる。
祖母がやってきて、私の顔に油を塗り、傷が治るまでなでてくれた。そして母の苦しみを和らげ、無条件の愛を私に注ぎ続けてくれたのである。だから私には「無条件に愛された」という実感が、同じ恵まれた環境で生を受けた赤ん坊よりもずっと強かった。

どの道を選んでも、両親は私を支持し愛してくれることがわかる。支持されて成長したという実感のおかげで私は好きな仕事につき、「与えて、治す」という自分の願望を全うできる信念を持てたことは明らかだ。

こうした初期の体験で、私は生き残る者になれる条件を身につけた。人生には次々に障害が出てくるが、私はいつも克服できると感じた。
他人に認められなくとも、家族はわかってくれる、まさに家族のおかげで私は自尊心を保ち続けられたのである。


引用文献:
バーニー・シーゲル著, 石井 清子訳(1988)『奇跡的治癒とはなに か― 外科医が学んだ生還者たちの難病克服の秘訣』日本教文社, pp.104-105

これを読んだ時、小児外科病棟で働いていた時に出会った、たくさんのご両親の顔が思い浮かびました。
待ちに待ったお子さんが生まれ、ほどなく病気があると医師から告げられた時、ご両親の心の中は心配ではちきれそうだと思います。
たくさんの医療器械に囲まれた我が子に、なすすべもなく、自分が何かとても無力な存在のように思っている方もいらっしゃるかも。
でも、そんなふうに思わないでください。
元気なお子さんだから愛するのではなく、病気のお子さんだから愛するのでもなく、あなたのお子さんだからこそ、あなたはお子さんに「無条件の愛」を注ぐことができるのですから。
そして、その無条件の愛は、言葉を知らない赤ちゃんも、しっかりと感じとることができるのです。シーゲル先生のように。

良くなっても、なかなか良くならなくても、それでも自分のことを存分に愛してくれる存在がいるということは、かけがえのない大きな安心感をもたらします。そして、それはお子さんの「自分で治っていこうとする力」を最大限に引き出すために、必ず必要なものだと思います。
親としてできることは、本当に大きな力を持っているのですから。

もう一つ、ここで注目したいところがあります。シーゲル先生のおばあさまの関わりで「お母様の苦しみを和らげた」という点です。
お子さんのことで家族の皆が頭がいっぱいのはず。
そのような時は、お子さんのご両親にも十分あたたかい目を向けられるべきだし、そうした中で力を蓄えたご両親は、きっとお子さんへ向ける愛に還元できるように思うのです。

 

生まれたばかりの赤ちゃんでも「無条件の愛」は、誰より心地良く感じているはずですから…。  

2014/1/31  長原恵子