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家族の気持ちが行き詰まった時
自力で窓辺に移動した麻痺の青年

お子さんがもしも病気のために身体が思うように動かない場合、あるいは麻痺でまったく動かないところがある場合、ご両親はお子さんの不自由さを不憫に思い、いろいろと身の回りのことをやってあげたい気持ちになると思います。
でも、もしかしたら、ご両親が思っている以上に、あなたのお子さんは可能性に満ちた存在かもしれません。
20世紀の催眠療法家として知られるアメリカの精神科医 ミルトン・エリクソン先生について、ジョーン・ボリセンコ先生が著書の中で、次のように記されていました。

有名な精神医のミルトン・エリクソンが、十代で小児麻痺になったとき、まだリハビリテーションの施設などはありませんでした。長い時間を彼は、前庭に面したベランダで、世の中の動きを見ておりました。自分を哀れむようなことはしないで彼は、自分の麻痺状態を利用して、姿勢とか、声の抑揚とか、隠された意味づけなどについて、鋭い観察者になったのです。

ある日エリクソンの両親が外出するとき、彼をロッキング・チェアに革ひもで結びつけて行きました。不幸なことに、窓からははるかに遠いところにおかれたのです。どうしたら外を見ることができるだろうかと、座ったまま想像しているうちに、椅子がゆっくりと動き始めたのです。
まもなく彼は、自分が窓にたどりつこうと思えば思うほど、揺れが大きくなることに気がついたのです。午後いっぱいかかって彼は、想像のし方を工夫して最大の動きができるようにし、とうとう揺れによって窓にたどり着くことができたのです!

この体験によって彼は、いろいろの動きについて考えることの効果を実験するようになりました。そしてついに、だんだんとその麻痺から回復することができるようになったのです。
後に彼は、医療催眠と枠組みの組み換えについて、すぐれた専門性をもつ理論的枠組みを作り上げたのですが、それは彼のこうした鋭い観察の力から生まれたものなのです。


引用文献:
ジョーン・ボリセンコ著, 伊東博訳(1990)
『からだに聞いてこころを調える』誠信書房, pp.171-172

ミルトン先生のご両親は息子が椅子からずり落ちないように、安全であるために、息子を革紐で椅子に結びつけたのでしょうが、まさか息子が工夫して、その椅子を大きく自分の力だけで揺り動かして、窓に辿り着くとは思いもしなかったことでしょう。外出先から帰宅したご両親は、驚きと喜びが入り混じった気持でいっぱいだったと思います。
大人の思惑を飛び越えて、子どもは思いがけない行動に出るものです。そうした自由な発想、自由な着眼点、自由な思いつきは、常識的な考え方の道筋が出来上がってしまった大人に比べて、子どもの方が遥かに豊かな才能を秘めているのだろうと思います。

「できるはずがない」そう思う前に「できないかもしれないけど、でも何か方法を考えれば、どうにかできるかもしれない…」そんな風に考えていくと、お子さんにとっても、ご両親にとっても、楽しさや心の昂揚が得られるようになるでしょう。

「できるかもしれない!?」そんな気持ちに駆られて、自分が何かに打ち込むことは、お子さんに新しい何らかの成長をもたらしてくれるはず。
そして、たった一つでもできたならば、それはお子さんにとって自信の一歩をもたらしてくれます。
それは何もかも病気を理由にして、諦めていたお子さんにとって大きな一歩です。「自分にできるはずない」そう思って引っ込み思案になっていたお子さんにとって、自分自身のことを信頼するきっかけになりますから。

 
お子さんに自信と喜びが得られるような何かが、見つかりますように…。
2014/3/7  長原恵子