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言葉と遺伝子発現

エッセイ「自分で守る前頭葉と神経回路」では、ネガティブな思考に伴う言葉によって、前頭葉の機能が抑制されることをご紹介いたしました。
ネガティブな言葉や攻撃的な言葉による脳への影響は、それだけではすまないようです。アメリカの脳神経学者 アンドリュー・ニューバーグ先生によると、遺伝子の発現という点からも、影響を受けるのだそうです。

一方、ネガティブな言葉は遺伝子発現にどのような影響をもたらすのだろうか。極度にネガティブな言葉は、脳内で最も重要な言語中枢のひとつであるウエルニッケ野の機能を制御する遺伝子の正常発現を阻害することが、数多くの研究結果から明らかになっている。
攻撃的な言葉は、人聞を肉体的ストレスから守る神経化学物質の生成に関わる特異遺伝子を破壊するようであり、幼少期に攻撃的な言葉に曝されると、不安、憂欝、恐怖をうまく回避する能力が鈍ってしまう。また、脳にダメージを与えるネガティブな反すう[ネガティブなことを長い間繰り返し考えること]の原因ともなることが明らかになっている。


引用文献:
アンドリュー・ニューバーグ, マーク・ロバート・ウォルドマン著, 川田志津訳(2014)『心をつなげる』東洋出版, p.43

ウェルニッケ野とは左側頭葉にあり、聴いた言葉を理解するために大切な役割をするところです。その機能をコントロールする遺伝子がきちんと発現しないとは、人と人とのコミュニケーション上、とても困ってしまいますね。
また「人聞を肉体的ストレスから守る神経化学物質の生成に関わる特異遺伝子を破壊する」ということは、人は攻撃的な言葉によって自分の心が傷つくだけでなく、肉体的に自分を守ろうとすることさえも、言葉によって邪魔をされてしまうということ。
そう考えると怖い気持ちになってしまいます。
しかし逆の視点から考えてみると、自分が心地良いと思えないような言葉から遠ざかることによって、ストレスから守ってくれるための特異遺伝子の発現と作用が円滑であることを促すことになると言えますよね。

お子さんの病気のことで悩んでいるご両親にとって「ネガティブな言葉」とはお子さんの回復が思わしくないことを表す言葉。
あるいは、この先いろいろ考えて、心配事がどんどん悪い方向へと膨らんで、その中に登場してくる言葉。
ご両親が「最近、どうも気が滅入る」「医師から説明されても、何度聞いても頭の中に入ってこない」「体調が優れない」と感じる時は、もしかしたら言葉によって起こっている脳内変化の表れかもしれません。
言葉を「ネガティブ」と捉えるか、「ポジティブ」と捉えるか、それはそれを聴く人の捉え方によって変わって来るかもしれません。
ネガティブはネガティブであったとしても、その度合いが変わって来ることでしょう。
ネガティブな状況に打ちのめされないようにするには、どうすれば良いのでしょうか。
人それぞれ違うとは思いますが、医師から説明を受けた時に、状況説明は「事実」として受け止め、そこから先、様々な心配をする思考回路を一休みさせることが肝心のように思います。

 

まだ起こっていない心配事に心を奪われるよりも、今、この時点で病気で頑張っているお子さんへ、心を向けた方がずっと良いはず。

2014/9/11  長原恵子