この土偶は昭和20年頃、群馬県東吾妻町郷原の道路工事中に発見された(※1)ものです。立位の状態では高さは30cm(※2)のこの土偶ですが、会場の解説板によると、この土偶は土中の石囲いの中に横に寝かされた状態で発見されました(※3)。胸の上から肩、そして腹部から両下肢にかけて直線がいくつも刻まれ、いくつかの渦巻文様が刻まれています。渦巻はちょうど関節があるあたりに位置しますが、何だかエネルギーの流れの合流を表現しているかのようです。
臍部から下がる線は妊娠線で、その下にも産道が表現されていることから、生命の誕生を祈る信仰遺物(※4)と考えられているそうです。
わざわざ石で囲まれたところに収められていたこの土偶。医療の発達していない縄文時代の女性にとって、出産は文字通り命がけだったことでしょう。妊娠期間無事に過ごすことができ、赤ちゃんが無事に誕生しますように…と祈りが捧げられて、土の中に収められたのかもしれません。 |