1) ひとたび生きがいをうしなうほどの悲しみを経たひとの心には、消えがたい刻印がきざみつけられている。
それはふだんは意識にのぼらないかもしれないが、
他人の悲しみや苦しみにもすぐ共鳴して鳴り出す弦のような作用を
持つのではなかろうか。
2) 自己をふくめて人間の存在のはかなさ、もろさを身にしみて知っているからこそ、そのなかでなおも伸びてやまない生命力の発現をいとおしむ心である。
そのいとおしみの深さは、経て来た悲しみの深さに比例しているといえる。
引用文献:
1)
神谷美恵子(1980)『神谷美恵子著作集 1 生きがいについて』
みすず書房, p.130
2) 前掲書, p.132 |