空を見上げて、考える時 |
お子さんを亡くされた後、日中は家の用事や職場での仕事でいくらか気が紛れているけれども、夜になったら寂しさが募り、どうしようもないという方がいらっしゃいます。そのような時に、思い出していただきたい言葉をアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ氏の作品『星の王子さま』の中に見つけました。『星の王子さま』は、サハラ砂漠に飛行機が不時着した操縦士と、とっても小さな惑星B612からきた王子さまとの交流が描かれた小説です。「かんじんなことは、目に見えないんだよ」(※)。という有名な言葉で、ご存知の方も多いと思います。
(※)サン=テグジュペリ著, 内藤 濯訳(1953)『星の王子さま』岩波書店, p.115
いくつかの星を巡り、しばらく地球で過ごした後、これから自分の星に戻ろうというその前に、王子さまは操縦士と語り合います。交わされた王子さまの言葉の中に、まるで先立ったあなたのお子さんの気持ちが重なっているかのような個所がありました。そのあたりを抜粋してみます。 |
「ぼくは、あの星のなかの一つに住むんだ。
その一つの星のなかで笑うんだ。
だから、きみが夜、空をながめたら、星がみんな笑ってるように見えるだろう。
すると、きみだけが、笑い上戸の星を見るわけさ」
そして、王子さまは、また笑いました。
「それに、きみは、いまにかなしくなくなったら
――
かなしいことなんか、いつまでもつづきゃしないけどね――
ぼくと知りあいになってよかったと思うよ。
きみは、どんなときにも、ぼくの友だちなんだから、ぼくといっしょになって笑いたくなるよ。
そして、たまには、そう、こんなふうに、へやの窓をあけて、ああ、うれしい、と思うこともあるよ……(略)」(1)
* * *
夜になったら、星をながめておくれよ。
ぼくんちは、とてもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか、きみに見せるわけにはいかないんだ。
だけど、そのほうがいいよ。
きみは、ぼくの星を、星のうちの、どれか一つだと思ってながめるからね。
すると、きみは、どの星も、ながめるのが、すきになるよ。星がみんな、きみの友だちになるわけさ。 (2)
引用文献(1):
サン=テグジュペリ著, 内藤 濯訳(1953)『星の王子さま』岩波書店, p.144
引用文献(2):
前掲書, p.143 |
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お子さんを亡くした後、悲しい気持ちがすべて消え去ってしまうことはないだろうけれど、「あの子と出会えて本当に良かった」と思える気持ちが心の中を大きく占めるようになれば、心の重苦しさは変わっていくことでしょう。
そして夜は一層強まった寂しさを連れてくるのではなく「どれがあの子の星なのかなあ」と楽しく考える時間を与えてくれるのであれば、夜が来るのが待ち遠しくなるかもしれませんね。
でも、一体、どれがあなたのお子さんの星?
……
わからないということは、それはそれで良いのかもしれません。
王子さまはこんな風に言います。 |
だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。
そして、<ぼくのすきな花が、どこかにある>と思っているんだ。
引用文献: 前掲書, p.40
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特定のどこかの星を思い定めたならば、雲が出ていたり時間の関係で、その星が見えないこともあるでしょう。でもその星が「ない」のではなくてどこかに「ある」と思えることは、見えない時の失望でどんどん落ちて行く気持ちをきっと引き留めてくれるはず……。 |
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あなたにとって毎日一日の終わりが、寂しくて孤独な時間でないようにと、お子さんもきっと願っているはず。 |
2014/12/2 長原恵子 |