フルカワ博士は、もし自分がこのままもがき続けたら、死んでしまうと感じた。このことについて思案していると、その霊が声を発しないまま、ふたつの選択肢があると伝えてきた。
死ぬまでもがき続けることを選ぶか。
それとも精神的に恐ろしい苦痛を伴うだろうが、自分の肉体に戻ることを選択するか。
博士は戻るほうを選んだ。
「あんなに精神的につらい思いをしたのは、はじめてだよ」
博士はそういった。
息子を失う苦痛を通して、フルカワ博士にははっきりとした変化があった。ひとつには、死に対する恐怖を前ほど感じなくなったこと。そしてもうひとつは、人生の大きな意味を悟ったことだ。
「息子が死んだとき、わたしは死んだらどうなるかわかったんだと思う。そして、それを知ることでわたしは慰められたんだ」
引用文献:
メルヴィン・モース/ポール・ペリー著, 池田真紀子訳(1995)『死にゆく者たちからのメッセージ』同朋舎出版, pp.140-141