アレグザンダー先生
18歳だった息子のベンは2007年の10月に神経膠腫(上衣腫)の診断を下され、その5カ月後にこの世を去リました。この手紙には、亡くなるまでの3日間に昏睡におちいっていたときのことを書かせていただきます。
死にかけている子供を見守る母として、あれほどつらい思いをしたことはあリません。
私たちは息子を症宅ホスピスで看取ることにし、息子は主寝室のべッドに横になっていました。昏睡に落ちる前から、いつでも必ずだれかがそばについて手を握っていました。そうすることに決めていたのです。決してひとりにはせずに、肉親の兄や姉、夫や娘と交代で一晩中息子の隣に横になリ、付き添っていたのでした。
私が夢を見たのは、亡くなる3日前の晩でした。夢というよリ、鮮明にそれを体験したのです。うとうとと眠リに落ちる前に、私はベンの手を握リながら、絶望、怒リと混乱に駆られ、神さまに訴えていました。そのあとで瞬く聞に、暗いながらも軽やかな天国に引き上げられ、まるで実際にそれを体験したような夢を見たのでした。
天国には穏やかな安らぎが満ち、ただ愛に包まれていることがわかリました。疑う余地などどこにもないほどはっきリと、自分が神さまとともにいることが感じられ、見回すと地球の断片がパラパラと落ちてきているのが目についたので、”これはいったい、どういうこと?”と思いましたら、自分で答えがわかっていたのか魂が答えてくれたのか、その答えがわかリました。
これはベンに起きていることなんだわ。ベンの身体が少しずつ小さくなっているところ……それがわかると同時に、私はベッドに身体を起こしたのでした。息子はもう天国に足を踏み入れていることに気づいていました。
それから2日後に、ベンはこの世を去ったのでした。
引用文献:
エベン・アレグザンダー, トレミー・トンプキンズ著, 白川貴子訳(2015)『マップ・オブ・ヘヴン―あなたのなかに眠る「天国」の記憶』早川書房, pp.147-148