彼は、まさにいまわのきわに私の手を取ってくれたのですが、あの暗黒の一瞬を思うとき、私は今でも彼の手の握力を感じるのです。
もし私が、彼は本当に死んでしまったのだと考えていたとしたら、あんなに親しく優しかった友を亡くしたことに私は耐えられなかったでしょう。
けれども、彼の気高い哲学と来世が存在するという信念が、私の夢想などおよびもつかないような幸せで美しいあの世で、ふたたび彼に会えるはずだというゆるぎない信仰を支えてくれました。彼のたぐい稀な人柄の記憶が心にとどまっていて、それがいつも私を力づけてくれています。
引用文献:
へレン・ケラー著, 鳥田恵訳(1992)『へレン・ケラ一 光の中へ』めるくまーる, pp.48-49 |