病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
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天文図に託された思い

先週金曜日(2014/5/9)、東京国立博物館で開催されている特別展「キトラ古墳壁画」に行ってきました。相当混雑しているだろうなあと覚悟はしていたけれど、実際行ってみると、夕方、段々と陽がかげってくるのに、館外には果てしない長蛇の列。
「今日は午後8時までに会場前の列に並べば(金曜日は開館時間が延長され、午後8時まで開館なので)、時間を過ぎても責任もって中に入れますから」という係員の方の言葉を信じて、あと数時間を有効活用するために、博物館敷地内にある東洋館の「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」に行ってきました。バーチャルリアリティ作品「キトラ古墳」が上映されていたからです。
ここは以前からいろいろな良質の作品を取り扱っているのですが、今回は実物のキトラ古墳壁画を見るための予習のつもりで、行ってみました。
そこでとても印象深かったのが、石室天井の「天文図」でした。
世界最古級だそうです。
星を表す金箔は赤い線で結ばれ、星座が彩られていました。一目で北斗七星とわかるものもありました。
天文図には金箔の星や赤い円があったのですけれど、小さな穴もありました。何とそれはコンパスの芯の部分だそうです。当時、細い線がぶれることなく、にじむこともなく、きれいに赤い線が引ける技術。筆なのでしょうか?筆だとしても、その筆をしっかりと固定するために小さなねじのようなものも作られていたはず。素晴らしい技術ですね。
いくつかの赤い同心円と星座を見ていたら、まるでプラネタリウムに来ているようです。空には線はありませんから。
本当の星空にはない、意味のある世界を作りだしたかったのかもしれないなあと思いました。

人は亡くなった後、魂は天に帰り、そして地に残された身体には魄(はく)が宿ったままだと考えられた思想があります。道教の魂魄(こんぱく)思想です。もしかしたら、キトラ古墳石室が作られた頃、そうした思想があったのかもしれませんね。勝手に想像が広がってしまいます。
死後の世界で困らないようにと、古墳の石室に副葬品を収めることが知られていますが、星空は何のためだったのでしょう。それも、ただの星空ではなく、星座として描かれているのはなぜ?
これらの星座には「四神」(青龍/白虎/玄武/朱雀)のように、亡くなった方を守る力があると考えられていたのでしょうか…。古墳の中に閉じ込められた魄に明りをもたらし、慰めるためのものだったのかもしれません。

でも私はこう思うのです。
きっと、魂も魄もしっかりと、癒されていたに違いない…と。
この世で十分に人生を生きてきた人の死後に、寂しいことがあるはずはない。皆救われて、落ち着いて、安らかになっているに違いない、そう思うのです。
安らかであるのに、なぜ立派な石室に四神や十二支、星空が描かれたのか?それらは遺された方々の思いを伝えるためだったように思います。
亡くなった方へ伝えたかった思いを形にして、伝えようとしたのだと思います。実際に自分が描くことができなくても、それらを描くよう誰かに命じることによって、自分の思いをその人たちに託すのです。
怖い目にあわないでほしい。無事でいてほしい。そう願う自分の思いが具象化されて行くのです。

亡くなった方と生前、十分に話すことができず、伝えられない思いが山ほどあったというあなた、それは何かの形にすることによって、思いを届けることができると思います。
その形が宗教的なことであろうと、普段の暮らしの中にある身近なことであろうと、何でも良いのです。散歩しながら心の中で語りかけるのでも良いし、お墓参りでも良いし、伝えられなかった思いのエネルギーをまったく別の行動に向けて何かを作ってみるとか、どこかに出かけてみる…そういったことでも、とにかく何でも良いのです。あなたが一生懸命になれることであれば。
行きどころのない悔しいエネルギーはため込まず、少しずつリリースしていくことが、大切なのですから。

 
先立ったお子さんに、思いを伝えられず、残念に思っているご両親。
不完全燃焼な気持ちは、どうかため込まないでくださいね。 
2014/5/14  長原恵子