幸せそうな、まるで生きているかのようなジミーは、男の人の手を握っていた。だれの手を握っているのかはわからなかったが、ジミーが幸せな気分でいることだけはわかった。ジミーは尊敬のこもった眼差しでその人の顔を見つめ、心に大きな安らぎを感じているように見えた。ビジョンは映画のようにリアルで、一分間ほども続いた。
ジミーはひと言も発しなかったが、リザベスが見る限り、その目がすべてを物語っていたという。
「ジミーの明るいブルーの目には生の輝きが戻り、不安の影はありませんでした」リザベスはいう。
「わたしにはジミーが唇を動かさずにこういっているのが聞こえました。ぼくはもう大丈夫だよ、と」
リザベスは、このビジョンのことを夫にだけは話した。ほかの人にはいわないつもりだったが、自分の見たものがあまりにも鮮明だったので、だれかに話すべきだと思い始めた。そして、少なくともジミーの家族には話そうと考えた。彼女の見たものについて知れば、慰めになるはずだ。
葬儀のあと、リザベスはジミーの母親をわきへ呼んだ。そして、墓地のすぐ外にある木のそばで、自分の見たものについて話した。母親は、聞くやいなや、わっと泣き出した。
「夫が見たのとまったく同じよ」母親はいった。「ジミーが亡くなってすぐ、夫はあなたと同じものを見たんです」
家族を始め、この話を聞いた医療関係者に至るまでジミーとかかわりのあった人々はすべて、このビジョンによって心が慰められたと感じていた。あのように長い死のプロセスを目撃したあとの彼らの心に、この話は安らぎをもたらしたのである。
引用文献:
メルヴィン・モース/ポール・ペリー著, 池田真紀子訳(1995)
『死にゆく者たちからのメッセージ』同朋舎出版, pp.10-11
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