病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
大切なお子さんに先立たれたご家族のために…
 
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幼稚園バッグにくっついて

先日、あるお母様にお目にかかりました。彼女の二人目のお子さんは、二年前、病気でお空に帰って行きました。普段お目にかかる時は、お母様お一人ですが、その日はお姉ちゃんが一緒に来てくれました。二年前のお姉ちゃんは、まだあどけない表情だったけれど、随分背が高くなっていました。とってもしっかり者で、お茶目で、明るくて、そして聡明なお姉ちゃんは、いよいよ来年小学生。こうしたお子さんの成長を目にすると、ご家族が悲しいお別れをしてから、経った月日の流れを改めて感じます。

さて、そのお姉ちゃんが教えてくれたことがあります。
お姉ちゃんは、ずっと妹ちゃんと一緒に過ごしているのです。もちろん、お姉ちゃんは知っていますよ。妹ちゃんが亡くなったことを。
「天国にいるの」そう教えてくれますから。
でも、妹ちゃんは、お姉ちゃんのことが大好きで「お姉ちゃんと一緒に遊びたい!」と思い立ったら、すぐさま、この世界にあそびに来てくれるんですって。
「天国からドッスーンって、降りてくる」

こちら2017年4月、成田ー釜山便の飛行機内から撮った写真です。空の上はこんな雲のおうちなのかな。富士山よりも高い空から、家族のこと見守ってるかな。

どんなにたくさんの白い雲があっても、広々した青空だから、空のおうちはちっとも窮屈じゃないね。

もくもくの雲は、風に乗って、好きな場所に好きなように動いていけるのかな。

そして、お姉ちゃんと一緒に遊ぶんですって。お姉ちゃんには妹ちゃんの姿が見えているし、声も聞こえているんです。お話を伺った時も「今、ここに来てるよー!」って。
お姉ちゃんが妹ちゃんと遊びたいなーって思った時は、お姉ちゃんが心のなかで小さい声で、呼びかけるんですって。
「OOちゃん、遊ぼう!」

そうするとまたまた妹ちゃんは、すぐに表れるんですって。
塗り絵したり、かくれんぼしたり、楽しい遊びをいっぱいします。お姉ちゃんからお話を伺っている間も、妹ちゃんは元気、元気。お姉ちゃんの横で塗り絵をしていたかと思ったら、今度は急にお母様の膝の上に座って甘えてみたり…、そんな様子を残念ながら私の目には見えないし、何も聞こえてこないから、お姉ちゃんが代わりに教えてくれます。
「今、OOしてるよ」「OOって言ってるよ」
お姉ちゃんのその実況中継を聞いて、私もワクワクしてきます。

そう言えばかくれんぼする時、妹ちゃんは膝を抱えて丸くなって、小さくなったら、小石になっちゃう時があるんですって。でもお姉ちゃんはそれを知っているから、見つけちゃうと妹ちゃんは「ばれちゃったー」って、また元の姿に戻るんですって!物にも魂が宿ると言いますが、まさか小石が…そうすると、粗末に扱ってはいけないですね。

天国はとても居心地の良い場所だそうです。妹ちゃんのホームグラウンドは天国だから、普段はそちらで過ごしていて、遊びたい時、会いたくなった時に、地球のもとのおうちに遊びに来るそうです。

そして当日はお話を伺っているお部屋に、なんと十人も天国から友達をつれて遊びに来てくれていたそうです。妹ちゃんの交友範囲はとても幅広いみたい。「こんなに背の高いお兄ちゃんがいるよ」って教えてくれたのは、入口のドアの上のあたりの高さ。たぶん高校生くらいなのかなあ。そして「勉強好きなお兄ちゃん」「本が好きなお兄ちゃん」「サッカーが好きなお兄ちゃん」も部屋の中に来てくれて、満員御礼状態だったらしいです。妹ちゃんの親衛隊みたいなお兄ちゃんたちなのかな?でも、お兄ちゃんたちは途中で「疲れた」と言って天国に帰っていったそうです。あー、お茶もお菓子も出さなくてごめんなさい。後でそう気付いたときには、時すでに遅し。せっかく来てくれたのに、お兄ちゃんたちの話題を話していなかったから、退屈しちゃったのでしょう。それに妹ちゃんが楽しそうに過ごしているのを見て、安心したのかな。

夜になったら、お姉ちゃんはお母様のそばで寝るけれど、妹ちゃんも一緒に寝るのだそうです。だからお姉ちゃんはお母様の横にぴったりくっつくのではなくて、妹ちゃんが横になれる分、スペースを開けるんです。
妹ちゃんは普段はお母様とお姉ちゃんと一緒に寝るけれども、時々こっそり、お父様のお布団の方にももぐりこむんですって。お父様、気付いているかなあ。

妹ちゃんが、ご両親に何か伝えたいことはないか、お姉ちゃん経由で尋ねてみました。
「あるんだって。
ママのお顔見ながら「お母ちゃん大好きー」って言ってる。
ママがわかったよって言うまで、何回も何回も言うよー!だって」
「お母ちゃん、お父ちゃん大好きー!」

そして妹ちゃんはお姉ちゃんが幼稚園に出掛ける時、幼稚園バッグにくっついて、一緒にバスにのって幼稚園に遊びに行くんですって。
でもね、お母様のことが心配だから、家に戻ったお母様のところに瞬間移動して、大丈夫かなってちらっと覗き見して、安心したら、幼稚園に帰ってくるんです。
天国に帰る時は、肩のところにある小さい羽をパタパタとさせたら、すぐにピュンっと戻れるんですって。
天国で神様にお願いすると、羽をもらえるそうです。

妹ちゃんが生きていた頃、親御さんが「守る」立場だったけれど、今ではお子さんが「守る」立場になっているんですね。妹ちゃんはもうすぐお誕生日。この世の年齢では三歳になります。でもそんな小さなお子さんが親のことを心配して、幼稚園から戻ってくるなんて…その話を聞いた時、心がジーンとしました。

妹ちゃんとの悲しいお別れをした時、お母様はお姉ちゃんに「これからは心の中にあるちっちゃいおうちに、帰って来れるんだよ」ってお話したんだそうです。
きっと、その言葉がとっても良い導きをして、今に至っているのかなあって思います。

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浄土真宗の考えの中に「還相回向(げんそうえこう)」という考えがあります。亡くなった方がお浄土から再びこの世界に戻ってきて、今この世界で生きる人々を教え導く」という考え方。
お姉ちゃんと妹ちゃんのやりとりを聞いて、還相回向ってこのことかなあと思いました。
お姉ちゃんは妹ちゃんを亡くした後、ほんの一時期ですが、気持ちの不安定さが行動として現われたこともありました。でも今こうしてお姉ちゃんは自分の人生をしっかり生きている。今年は年長さんだから、三角巾かぶって、給食当番がスタートするんですって。「三角巾用意しなくっちゃ」って話をしていました。きっと妹ちゃんは三角巾・エプロン姿のお姉ちゃんの横で、にこにこしながら、パンをお皿にのせて、お当番さんの手伝いをしていることと思います。そして、天国で十人の友達と一緒に、楽しく過ごして、これからも、天国とこちらの世界を行ったり来たりしながら、ご家族のことをしっかり見守ってくれるんだろうなあ。

お子さんは死後、あなたのことをずっと守っています。あなたがしっかり生きることにより、お子さんは心地良く過ごせるのです。
2017/4/18  長原恵子