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アート・歴史から考える死生観とグリーフケア |
聖母子
(アンドレア・デッラ・ロッビア工房, バルジェッロ美術館蔵) |
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作品名: |
聖母子 |
作者: |
アンドレア・デッラ・ロッビア工房 |
技法: |
彩釉テラコッタ |
寸法: |
直径42cm |
制作年: |
1510年頃 |
所蔵先: |
バルジェッロ国立博物館所蔵(イタリア) |
出展先・年: |
ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美, Bunkamura ザ・ミュージアム, 2015年 |
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会場の解説板によると元々、カミッラ・バルトリーニ・ルチェッライにより、1500年にカファッジョに創立されたドミニコ会のサンタ・カテリーナ第3会修道院にあったものだそうです。
カミッラはサン・マルコ修道院長ジロラモ・サヴォナローラの熱心な信奉者だったそうです。全体として華美すぎない装飾はサヴォナローラの芸術感に合致するとのこと。
たしかに彩色を施した焼き物の飾りである場合、高価な塗料をふんだんに使って、きらびやかな額縁におさめられた絵に比べれば、シンプルな印象をもたらします。
しかしながら、今回の展示品の中で、私にはひときわ印象的でした。
テラコッタの下地背景はまるでウェッジウッドの陶器によく用いられる
少し抑えめの青色。
その周辺は白い5弁の花と濃い緑の葉で囲まれています。
テラコッタの中心は聖母マリアの膝の上に抱かれて、立っている幼子イエスであり、マリアとイエスは、美しい照りのあるあたたかみのある白色の焼き物の上に釉薬のせいか淡い水色が浮かび上がっています。
特に立体的なテラコッタの向かって右側は、その水色がはっきりと艶やかに表れています。マリアとイエスの表情が、非常に清らかで、安らかで、そのテラコッタがあると、そこの空間がまるで急に聖性を帯びてくるような感じさえします。
会場で販売されている公式図録の写真ではテラコッタの中心は、灰色がかった白色ですが、実物は全然違う、みずみずしい美しさを放っていました。
お子さんを亡くされて、苦しい気持ちでいっぱいの時、心の中がぐちゃぐちゃで、気持ちのエネルギーがダウンしてしまったとき、そうした何か心の掻き乱される思いを、少し緩やかになだめてくれるような力を持っているようなそんな作品に思えました。
先日、お空へ帰ってしまった赤ちゃんのあのママとパパとお姉ちゃんに、
そうした力が届きますように。
会場を出たら、すっかり真っ暗で、おまけにぽつぽつ小雨が降っていて、傘を持たずに出かけていた私は、早足にならざるをえなかったけど、そう祈らずにはいられない時間でした。 |
2015/6/7 長原恵子 |
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