灰陶竈(前漢時代)
(東京国立博物館 蔵) |
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灰陶竈(かいとうかまど) |
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(撮影許可あり) |
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場所・時代: |
中国 前漢時代・前2〜前1世紀 |
所蔵先: |
東京国立博物館(東京)列品番号 TJ-2055 |
出展先・年: |
東京国立博物館 東洋館(東京)常設展示, 2017 |
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亡くなった方を埋葬する際、一緒に納める副葬品の中でも死後の生活に必要だと考えて納められた模倣の生活器物は、明器(めいき)と呼ばれます。そのまま本物を入れるわけにもいかないので、小さなサイズにして作られた明器ですが、そこには亡くなった方への思いがたくさんこもっています。今日ご紹介するのは中国の前漢時代の明器「灰陶竈(かいとうかまど)」です。火を起こし、その上で調理を行うための竈ではありますが、とても美しい文様で飾られていました。
展示パネルにはどの部分が何を表しているのか解説が出ていたので、こちらの写真の上に文様の名前を付けておきます。竈には魚や皿、杯等が所狭しと半肉彫りで再現されており、大変丁寧な作りです。 |
大きな魚を竈で調理して、亡くなった方に存分に味わってもらいたい…という思いが伝わってくるようです。
杯が6個もあるので、ご主人様の他に、従者の分もあるのかもしれません。 |
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そして竈の焚口のある側面が実に見事な文様です。何だか銅鐸の側面の文様にも似ていますね。 |
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こちらに登場する雲気紋、何やら気になったので、中国の雲気紋自体どういう意味があるのか調べてみると「中国の神仙思想では気や雲は天界の象徴であった釈迦の住まう霊鷲山(りょうじゅせん)や、大海に立ち、その頂はとう(りっしんべんに刀)利天に達する須弥山(しゅみせん)にはこの「気」がたちこめ、まわりを神仙・飛天・瑞鳥・天馬・麒麟が瑞雲に乗って飛ぶとされ…」(※)とありました。この竈と一緒に葬られた人はそうした貴い世界でこれから生きていくことができますように…といった思いが反映されているのかもしれませんね。
亡くなった方に冷えたものではなくてあたたかいものを、
乾物ではなくて肉や魚も。そしてこねて作るようなもの、中国だったら饅頭や餃子などでしょうか。あたたかい出来たてのおいしい料理をお腹いっぱい食べて、素晴らしい世界で安らかに過ごしてほしいと願って…。
引用文献:
※早坂優子(2000)『日本・中国の文様事典』視覚デザイン研究所, pp.202-203 |
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2017/11/26 長原恵子 |
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