「天空図屏風 日は照らせれど」千住博 作
(羽田空港国内線第一旅客ターミナル) |
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作品名: |
「日は照らせれど」天空図屏風シリーズ |
作者: |
千住 博 |
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制作年: |
2011年 |
所蔵先: |
羽田空港国内線第一旅客ターミナル |
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2018年5月、訪れた羽田空港に千住博先生の作品が飾られていました。こちら南ウィング出発ロビーの出発保安検査場Cの手前。「天空図屏風」です。これはシリーズとして他にも空港内に数点あるそうですが、当日目にしたのはこちらの作品「日は照らせれど」です。 |
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この作品は2011年11月、羽田空港国内線第1旅客ターミナルのリニューアル工事を機に、出発ロビーに掲げられることになったそうです(※1)。 |
ロビー床面には千住先生のこの作品に関する解説がありました (※2)。「天空図屏風は、空と対話することによって生まれた、最も自然に近い私の作品だ。」と書かれていました。
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墨流しという日本古来の伝統技法を用いて描かれたのだそうです。遠くから見ても美しい作品です。屏風はその折り目の角度があることから、光の当り具合によって作品の雰囲気が随分変わってきますが、そういう点からも、いろいろな表情を持つ作品です。
八曲一隻のこの屏風、向かって左側の第四扇から八扇までは白い雲から雪や雨が強い風と共に吹き降りてきているかのようです。 |
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向かって右側の第一扇から第四扇までは強風にあおられて岸へと打ち寄せて高い波の背を作っている海の様子のようにも見えますが、天空での出来事を表現したもの。
ロビー床面の解説には「古代の日本人は天空の絵画を観て、万葉集に多くの和歌を残した。」とあり、横には万葉集の歌が添えられていました。草壁皇子の薨去を悼み、柿本人麻呂が詠んだ挽歌です。 |
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茜さす 日は照らせれど
ぬばたまの 夜渡る月の
隠らく惜しも
万葉集巻2-169 |
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169番の歌は「日並皇子尊 殯宮の時、柿本人麻呂の作る歌一首 并せて短歌」ということで反歌の二首目に登場します。
一般的には「日は照らせ…」は第40代天武天皇の後、第41代天皇に即位された持統天皇のことを指し、「月の隠らく…」は689年に薨去された草壁皇子のことをと表現したものと解釈されています。ただ、草壁皇子は日並皇子尊(ひなみしのみこのみこと)と称されていることから、別の解釈もあり得るような気がします。草壁皇子は20代の若さで早世され、姿形はお隠れになったけれども、日の光の如く力強い素晴らしさは永遠である、といった意味が託されているのかもしれません。
千住先生は「天空は一種の画紙であり、その画紙には光、雲、大気、風により毎日絵が描かれている。いわば自然の絵画である。しかも、何億年もの間、ひとつとして同じものがない無限の絵画なのだ。」と記されていました。その「自然」を「生死」と読み替えても通じるものだと言えます。 |
参考・引用資料
※ 1 日本空港ビルティング株式会社 プレスリリース 2011/11/9
※ 2 天空屏風図 羽田空港ロビー床解説 |
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2018/5/22 長原恵子 |