埴輪 琴をひく男子
(個人 蔵・東京国立博物館展示) |
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品名: |
埴輪 琴をひく男子 |
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出土: |
伝茨城県桜川市出土 |
数量: |
1 |
時代: |
古墳時代・6世紀 |
所蔵先: |
個人 蔵 |
展示会場: |
2017/11 東京国立博物館 平成館
(写真撮影許可あり)
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椅子に座って、膝の上に琴をのせて弾いている男性の埴輪です。頭、顔、そして顔の左右に垂れ下がる下げ美豆良(みずら)や足にも一部、太い朱の線で描かれた模様がはっきり見てとれます。頭頂部が少しとがっているので、帽子を被っている様子を表現しているのかもしれません。
背筋をピンと伸ばして、膝の上に置いた琴を両手で弾いています。大腿部と膝でしっかり琴を支えられるように、両足は軽く開き、また足底部を支える小さな台までついています。
この埴輪を正面から見ると、琴に隠れてわかりませんが、横から見ると、琴を弾く両手の下の腰のあたりに、腕の長さと同じくらいの太刀を左後方に向けて差しているのが見えます。 |
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琴の音が響く様子は想像すると非常に優雅ですが、太刀を差している人が弾くのはどうも無粋な気がして……と思いましたが、古代の琴について調べてみると、美しい音色を楽しむためだけではなかったようです。 |
神奈川県横須賀市の蓼原古墳からも、椅子に座って琴をひく男性の埴輪が出土しています。横須賀市自然・人物博物館によるこの埴輪の解説(※1)を参照すると、琴は国政に関して神の託宣を請う際に天皇自らあるいは重臣が弾く弦楽器であったと考えられるそうです。その根拠として挙げられていたのが『古事記』と『日本書紀』です。『古事記』の仲哀天皇の条では天皇が琴を弾くことによって、建内宿禰大臣が神託を受けたとされ、『日本書紀』の神功皇后の条では神主となった皇后が武内宿禰に命じて琴を弾かせ、神託を待ちました。それゆえ古代の琴は、神を呼ぶための重要な祭祀用具とみなされていたわけです。
そう考えると、茨城県桜川市から出土したと伝わるこちらの埴輪と共に埋葬されていた人は、生前、神託を受けるような立場だったのでしょう。
そして亡くなってもなお、死後の世界で神の言葉を受けて、この世の人の生活が安寧であるように守るお仕事を埴輪と共にしていたのかもしれません。 |
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<参考ウェブサイト> |
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<写真> |
写真1~2 |
埴輪 琴をひく男子(当方撮影・撮影許可あり) |
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2018/8/11 長原恵子 |