病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
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悲しみで心の中がふさがった時
雲になって、雨となって

雨が降るとどうも落ち込み、身体がだるいけれども、お子さんを亡くされた後、それが一層ひどくなった…という方がいらっしゃいます。
雨の日すなわち低気圧の時に、だるく感じるのは、私たちの身体の中の副交感神経が優位になるためですが(詳しくはこちらでも取り上げました)、お子さんを亡くした寂しさが増し、やりきれない気持ちでいっぱいになると、雨の日が何だか恨めしく思えてきます。

キム・ギュワン氏脚本の韓国SBSドラマ「私の10年の秘密」(※)の第4話の中に、そんな気持ちを切り替えられるような言葉がありましたので、ご紹介したいと思います。
※別の邦題「出生の秘密」としても国内でKNTVで放送されていました

このドラマの主人公の女性イヒョンは母一人、子一人のシングルマザーの家庭で育ちました。父親が誰であるのか、明かされずイヒョンは大きくなりました。イヒョンは大変優秀で、アメリカへの大学進学を夢見ていましたが、家庭の経済的な事情を十分呑み込んでいるイヒョンは、何とか学費の足しにしようと投資にも励み、奨学金獲得のために勉強も頑張っていました。そんな中、母は膵臓がんで死亡してしまいます。

火葬後、イヒョンは一人で崖の際に立ち、海風に吹かれながら、母の遺灰を海に向かって撒きます。そして母に語りかけます。静かに、ぽつぽつと。その言葉の中には、死をどのように捉えるのか、イヒョンの気持ちが滲み出ています。
その表現は高校生ならではの感受性と言えるかもしれないし、これまで苦労して二人ぼっちで生きてきた母娘の間柄だから、生まれ出たものかもしれません。
でもその感性は、きっとあなたの心にも通じるものがあると思うのです。

第4話 42:00頃から次のようなセリフが登場します。

お母さん、
日に照らされた海水は蒸発して水蒸気になる。
古書店に住んでた時
ストーブの上にヤカンを載せたら
白い湯気が出たでしょ
そんな蒸気になるのよ。

それが空に上がると、蒸気同士がくっつくの。
そして雲になる。
どんどん大きくなって重くなったら
雨になるわ。

お母さん、
雨水に乗って済州島や日本を見て回ってね。
アメリカやヨーロッパにも行って
思う存分、楽しんできて
飽きたら、また空に戻ればいい。

そして雨になる。
雨が降ったら
お母さんが会いに来たと思うわ。

だからもう…じゃあね、元気でね、お母さん。


引用ドラマ:
韓国SBSドラマ「私の10年の秘密」
第4話 脚本:キム・ギュワン

海に向かって撒いた遺灰が海水に溶け込み、それが水蒸気となって雲になって、自由に空を移動し、そして雨となって地上に戻って来る…雲になったらいろいろなところに遊びにいけますね。
そのように考えるキム・ギュワン氏の発想、素晴らしいと思います。

雨の日は、お子さんがあなたの元へ遊びに来る日。
そして晴れたら、またお子さんは雲になって日本のどこかの場所へ、海外のどこかの国へ遊びに行っている…。
お子さんはあっちにもこっちにもお出かけして、忙しいですね。
そのように考えると、雨の日も寂しさが募る日ではなくなります。
「私の10年の秘密」は現在日本でDVDになって、見ることができます。

 

雨の日も晴れの日も、お子さんは楽しく過ごしています。あなたのところに来て、出かけて、また遊びに来て…それを繰り返して。  

2014/9/12  長原恵子