私は出産のとき死にかけました。力んでいたとき、血管が破裂し、血圧が急に下がってしまったのです。
激痛が走ったあと、突然体から抜け出ていました。自分の体の上に浮かんでいたのです。しばらくは医者たちをながめていましたが、そのうちにどんどん上に昇り始め、天井を抜けました。
実際、電気の配線を目にしたんですよ。
それから私は洞穴のようなところを上昇しました。
出口につくと、そこには自分と同じような姿かたちをした人々が数多くいました。何年も前に亡くなっていたおじいさん、おばあさんがいました。朝鮮戦争で戦死した叔父もいました。
それから、少年が一人私のほうへやってきました。
まだ小さな子供でした。彼はこう呼びかけてきたんです。
「やあ、母さん」。
それでその子が、数年前に死産した私の子供だったと分かったのです。私はしばらく彼と話をし、彼が親戚と一緒にその場所にいることに、とても満足しました。
やがて彼は私の手を取り、こう言いました。
「母さんは、もうもどらなくちゃいけないんだ。ぼくが見送ってあげるよ」
私はもどりたくありませんでした。でも彼はそう言って譲らないんです。彼は私を見送ると、お別れのあいさつをしてくれました。そして私は自分の体にもどったのです。
こんなこと、だれにも言えませんでした。
信じてくれる人なんて、いると思いますか?
夫は、耳も貸してくれないに決まってますから、はじめから話しませんでした。
引用文献:
ダニオン・ブランクリー, ポール・ペリー著, 大野晶子訳
(1994)『未来からの生還―臨死体験者が見た重大事件』同朋舎出版, pp.152-153 |