羊磚(ようせん)
(東京国立博物館所蔵) |
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品名: |
羊磚(ようせん) |
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出土: |
伝 中国河南省けい陽県付近出土 |
時代: |
前漢〜後漢時代・前1〜後2世紀 |
所蔵先: |
東京国立博物館東洋館所蔵 |
展示会場: |
2017/11 東京国立博物館 東洋館
列品番号 TJ-2383(写真撮影許可あり) |
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こちらの羊磚(ようせん)は地下墓の入口にはめ込まれていた部材です。古代中国では葬送場面で用いられるアートの中に、羊がモチーフにされることは、以前こちらのエッセイでも取り上げました。お墓や祭祀を行う祀堂の建材に用いられた石の表面に画像が彫られている羊の頭部の画像石もそうですし、揺銭樹(ようせんじゅ)では羊の背中から貨幣が実っている樹木が大きく枝を伸ばしています。
羊が図像に用いられる理由は吉祥の意味や死後の安寧の象徴、また邪気を祓うためとも考えられているそうです。
さて今回の羊磚は屋根の下に羊が首を出しています。羊の瞳、鼻の穴、そして背景の壁には二重丸の中に小さな四角があります(写真1, 2)。こちらは貨幣が表現されているもの。死後の世界でお金に困らないように過ごしてほしい……という願いが込められているのでしょうか? |
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写真1 貨幣型の瞳と鼻孔 |
写真2 角の下の貨幣模様 |
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この羊磚は羊を中心にしてシンメトリーにいくつかのパターンが配置されています。
写真3は羊のちょうど角の上あたりにある模様です。くるぶしまである長い衣を来た男性のように見えます。背の高さ程もある長い杖を左手に携えて横向きに立っています。亡くなった人を安寧な死後の世界へ迷わないよう、その行方を邪魔するものを退治し、導く役目があるのかもしれません。 |
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こちらは大きな木の下で2人座って合掌している様子が再現されています(写真4)。
羊の頭の上と下に配されています。ブッダは菩提樹の下で悟りを開いたと言われますが、同じように大きな木の下で静かに修業をしている僧侶の姿のように見えます。
そして屋根つきの門の上には首の長い鳥がいて、2人の門番の後ろには楼閣がそびえ立つ様子も再現されています(写真5)。それは死後の世界の入口なのでしょうか。 |
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羊、お金、修行僧、楼閣……それぞれ異なる図像ではあるものの、すべてに通じているのは死後の世界で死者が安寧に過ごせることを願う心だと思います。 |
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※写真はいずれも2017年11月当方撮影, 撮影許可あり |
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2018/6/28 長原恵子 |