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学生時代を振り返り、当時の一番嬉しかったことを尋ねられたら、あなただったら、何を思い起こすでしょう。
嬉しかったこと…私もいくつか頭に浮かぶけれど、その中で「一番」って言われたら、何だろうなあ…。意外と「一番」を決めるって、難しいことかもしれませんね。

先日読んだ、佐々木博之さん・志穂美さん夫妻の著書『洋平へ』の中に、次男大(ダイ)君のエピソードがありました(佐々木さんご一家に関する詳細はこちらをご参照ください)。中学時代を振り返り、高校の時に書いたもので「中学時代に、一番嬉しかったこと」。

高校になって、進路決定に役立たせるのか、自分をみつめなおしていくようなノートを書かされたらしい。
懇談会のとき、そのノートを手渡され、担任としては進路のページとか見てほしかったのだろうけど、私は偶然聞いた別のぺージを見て大笑いしていた。

「中学時代、一番うれしかったこと」
の欄に、
「階段でねんざしたこと」
ほかの人には意味わからないだろうね。

中学時代、下校中の石段で転んでねんざしたときのこと。歩けなくて、「助けてください」って叫んだら、たくさんの人が家からでできて、中学からはたくさんの先生がかけつけてくれて、病院に運んでもらったんだよね。みんなに迷惑かけて怒られるかと思ったのに、
「よく大きな声で助けを呼べた」
ってみんなにほめてもらったんだよね。

あれが一番うれしかったんだね。お母さんはけっこうトホホだったよ。おろしたてのズボン、壊滅的に破れていたからね。


引用文献:
佐々木博之・佐々木志穂美(2010)『洋平へ』主婦の友社, p.82

難しいお年頃の中学男子。新品のズボンが壊滅的に破けてしまほど、転倒して、足も捻挫して、ご本人もきっと「まいったなあ」って思ったことでしょう。人によってはそれを、恥ずかしい思い出、思い出したくない思い出、の中に入れてしまうかもしれませんね。
そして自閉症の大君にとって、自分から周囲に気持ちを伝えることって、とっても勇気が必要なことだったろうと思います。
とっさの出来事で、準備も何もしていないのですし…。

でも、大君はその思い出が一番嬉しかったこと。人の情に触れたことを「一番」に挙げる感性って、何だかとっても良いなあって思います。
それに、助けを求められた自分に「できたぞ!」って自信が湧いたことも、「一番嬉しかったこと」の理由なのかもしれません。

そしてノートの次のページには、自分で考える自分の長所と短所が書かれていたそうです。

「長所」
「どんなこともがんばること」
「短所」
「でもうまくいかないこと」
「長所 二行目」
「それでもがんばるところ」
「短所 二行目」
「それでもうまくいかないところ」

どこまで続くんやねん。
お母さんがもっともっとダイのいいところを教えてあげていればよかったね。これから一緒に数えていこうね。


引用文献:前掲書, p.83

頑張っても、うまくいかない、うまくできていないって自覚するのは、誰にとっても辛いこと。もう、努力することが面倒になってしまって、途中で投げ出したり、そこから逃げ出したり…と思ってしまうことは、多くの人にあるはず。でも「それでもやっぱり頑張る」って思える大君は、本当に心が強いんだなあと思います。

とかく、人は易きに流れやすいものだから。

うまくいかなくても頑張って、またうまくいかなくて…
世の中には、何事もそつなくうまくこなして、世渡り上手な人もいるけれど、でも、頑張ろうとする心の根っこがある人って、きっと逆境に強い人になっていくのだろうなあと思います。

 
自閉症のお子さんの心のうち、わからないことは多いけれど、親が思う以上に、すばらしい感性を秘めているのだろうと思います。 
長原恵子
 
関連のあるページ(佐々木博之さん・志穂美さん)
「7年越しの贈り物」
「平凡な日々が生み出す力」
「それでも頑張る人」 ※本ページ
「「心のひとさし指」を見つけた母」 
「グアバの気持ち」
「つながる心」
「幸せをもたらすいろいろな形」
「出会いを通して開く窓」
「手のひらの幸せに気付く人」