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家族の気持ちが行き詰まった時
手のひらの幸せに気付く人

今日は、佐々木博之さん・志穂美さんご一家のお話をご紹介したいと思います。佐々木家はご夫婦と三人の息子さんの五人家族。平成元年、誕生した長男洋平君は生後二か月の時、風邪をきっかけに受診したところ、足を震わせるような動きを指摘され、検査の結果、左脳がほとんどない状態だとわかりました。そして平成三年、六年に次男の大(だい)君、三男の航(わたる)君が誕生しましたが、お二人とも自閉症でした。大君は知的遅れは伴わず、航君には遅れを伴うタイプの自閉症でした。

ご夫婦の共著『洋平へ 君の生きた20年と、家族の物語(主婦の友社)』と、志穂美さんの著書『さんさんさん〜幸せは、いろんなかたちでそこにある〜(新風舎)』『目がみえない 耳もきこえない でもぼくは笑ってる 障がい児3兄弟物語(KADOKAWA)』の中には、三人の病気のお子さんたちの成長、生活、育児の大変さが赤裸々に綴られています。が、どの文章も、とても愛情に充ちたものです。だからこそ、その世界に素直に、引き込まれてしまうのかもしれません。ページに登場する言葉一つ、一つが人の心に一石を投じ、深く広がりのあるさざなみを立てるものですが、その中でも特に印象的だった所を、Lana-Peaceエッセイでは八回にわけて、ご紹介したいと思います。

さて今回は、変わることのない出来事をどう捉えるか、ということです。お子さんが病気と診断された時、病気による発達の遅れなどが起こって、ひどく落ち込んでしまった時、ネガティブな思いしか感じられない時…、「もう、こんなのは嫌だ!」と逃げ出したくなっても、そこから逃げるわけにはいかない…。あなただったらどうするでしょう。

志穂美さんは洋平君が脳の病気があるかもしれないと指摘され、精密検査が必要だと言われた時、ショックのあまり歩けなくなり、また、川に飛び込もうかと思ったほどでした。洋平君はその日の午後、総合病院に検査入院することになりました。後から合流したご主人と志穂美さんはいったん家に帰り、気を取り直したものの、検査が進むにつれ、洋平君は目も見えず、耳も聞こえていないだろうと医師から告げられたのです。

母さんは泣いて泣いて、泣くことにつかれちゃったころ、
「持ってないものを数えるのではなく、
持っているものを数えよう」って決心した。

「ないこと」より、きっとある「できること」を探して、
新しい夢を持とうって。


引用文献:
佐々木志穂美(2015)『目がみえない 耳もきこえない でもぼくは笑ってる 障がい児3兄弟物語』株式会社KADOKAWA、pp.16-17

すごいことですね。どうやって心を整理したら、そんな風に立ち上がれたのでしょう。元々の志穂美さんのお人柄によるところが、大きいのかもしれないけれど、本当に尊敬いたします。
手のひらの幸せに気付くって大事ですね。
幸せを見つけ出すのも、才能の一つだと思います。
そしてそれは、思わぬ波及効果をもたらすことになります。

志穂美さんのような発想の切り替えができると、これまでネガティブな気持ちに引きずられていた人も、だんだん変わることができると思います。なぜなら、自分にとって見えてくる世界が変わってくるから。
気持ちが変わるということは、行動も変わっていくということ。そうした行動によって生活が彩られ、その場の雰囲気も変わっていくのだと考えると、発想を切り替えることは、すべての大転換のきっかけだと言えます。

また、そうした変化は、こどもたちに影響を与えていきます。こどもは大人に比べて、いろいろなしがらみや、複雑な思考過程を持たない分、そうした影響によって起こる変化は、顕著だろうと思います。たとえば次男の大君の保育所でのエピソードが、示すように…。

「あーあ。5分しか、すわっていられなかったなあ」
って母さんは思ったのだけど、先生は、
「5分間、がんばってましたね」
って、言ったんだ。

おなじことなのに、言葉でずいぶんかわる。
ダイが窓から外へ出ようとしていたら、
「窓から出たらダメ!」って言わずに、
「あっちのドアから出ようね」って、先生は言う。

「ごはん、ごはーん」って泣いたら、
「今はダメ!」ではなくて、
「12時になったら食べられるよ」と時計を教えて、
給食を作っているようすを給食室の窓からみせてくれる。

先生のことばに、「ダメ」がない。
これはすごい魔法だ。
「ダメ」をなくしただけで、ダイは、泣くことがうんとへった。

よかった。この保育所なら、ダイはだいじょうぶだ。
ぼくも父さんも母さんも、とても安心したんだ。


引用文献:前掲書, p. 70

「ダメ!」と頭ごなしに否定されると、進む道が遮断されて、後にも先にも進めない…そんな気持ちになってきますものね。「OOすれば良いよ」「OOしたらできるよ」と代替案を示されることによって、また進むことができます。 それは大人だって同じこと。
もちろん小さなこどもには、物事の善悪や生命の危険に関わるようなことは、しっかり「ダメ」と教えることは必要。ただ、自閉症のお子さんの行動の中では「ダメ」と言われる機会が、どうしても他のお子さんよりも多くなってしまいます。それが重なると、気持ちが爆発するスイッチは、早くONになってしまうのかもしれません。そして更に「ダメ」は自分の行動ではなくて、自分自身に向けられたように感じてしまうのかも…。
そうした感情の複雑化は、ある程度の年齢を迎えたこどもたちに起こるはずだけど、自閉症のお子さんはそのあたりの成長が一足先に起こっているのかもしれません。そして、ダメ、ダメ…という言葉の背景、本当の意味をうまく掘り起こす能力の成長が追い付けていないから、「ダメ」と思ってしまった「自分」を傷つけてしまうのかもしれません。
そうだとしたら「ダメ」に替わる肯定系の言葉は、きっとこどもたちの先々の心までも、救うものだろうって思うのです。

 

親御さんは「変えられない状況」で、自分の無力さを嘆き責めることは、やめましょう。ポジティブな言葉で事実を言い換えられるようにトライして。それはみんなに、ハッピーをもたらすようになるから。

長原恵子
 
関連のあるページ(佐々木博之さん・志穂美さん)
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