ある日、自宅で、トロピカルフルーツの絵を描くといって、画用紙を十に分割して、十二個のフルーツの断面図を描き始めた。
さすがは食材フリーク。何も見ずにさっさと描く。うまいのだが、パックの色をもっとバランスよくいろんな色を使えばいいのに、緑の横にまた緑だったり、赤の下に赤があったり。
「パステルの色、いっぱいあるんだから、もっとバランス考えた
らいいのに」
「キワオにはキワオの気持ちがあって、グアバにはグアバの気持
ちがあるから。そのフルーツがバックには何色が似合うかだけ
を考えてあげたんだよ。一つ一つの気持ちにくらべたら全体の
バランスなんてどうでもいいんだよ」
この子の言葉でこんなに納得させられたのははじめてだった。
いつもはまともな雑談が成立しないダイだけど、実はキラキラした感性も胸の深いところに持っているのかもしれない。
引用文献:
佐々木博之・佐々木志穂美(2010)『洋平へ』主婦の友社, p.108 |