G夫人は、8,9歳くらいになる小さな娘たちミニーとアダを連れて、田舎に居る義理の姉の家を訪ね、そこに滞在していました。そののち夫人は、二人の娘と保母をロンドンの家へ先に行かせるため、朝の列車に乗せ、数時間後には自分も列車でそこへ向かいました。
ところが、朝の列車でロンドンに向かったはずの娘の一人が、その日の夕方、義理の姉の家の部屋に、歩いて入ってきたのです。部屋には、娘と仲の良かった従兄がいました。娘はそこに来て言いました。
『ウォルター、あなたにさよならを言いに来ました。
もう会えないの』
娘は彼にキスすると、部屋の中で消えました。
青年がびっくり仰天したのも当然でしょう。なにしろ彼はその朝、列車に乗った娘たちと保母を見送ったのですから。
青年の前に娘の一人が表れたと同じ時期に、じつは娘たちは二人とも、ロンドンの家で急病のため死にかかっていたのです。家に着いて数時間後のことです。そこに呼ばれた医者によれば、最もたちの悪い天然痘とのことでした。
二人とも、その週のうちに亡くなりました。妹の方、ミニーが最初に死にました。
彼女が埋葬された翌日、娘に先立たれた悲しみの中で、母はもう一人の娘アダの容態を気づかっていかした。アダも絶望的な状態だったのです。ところが突然アダは一種の昏睡状態から目覚めて、ベッドの脚のあたりを指差しながら叫びました。
『ああ、ママ、見て!あの美しい天使たちを見て!』
G夫人は何も見えませんでした。しかし、そのとき静かで甘美な音楽が聞こえたと言います。それは空中にただようような音楽だったと。すると娘は再び叫びました。
『ああ、ママ、ミニーがいるわ。私を迎えに来てくれたのよ』
娘はそう言ってほほ笑み、とてもうれしそうな表情を浮かべました。そのときG夫人は、はっきりと、こう述べる声を聞いたといいます。
『アダちゃん、ここへおいで。あなたを待っているわ』
するとアダはもう一度ほほ笑み、安らかに息を引き取ったのです
引用文献:レイモンド・ムーディ著, ポール・ペリー著, 堀天作訳(2012)『臨死共有体験 永遠の別世界をかいま見る』ヒカルランド, pp.190-192 |