少年が亡くなる直前、この看護婦は、白装束の女性が少年のベッドわきに立っているのを二晩続けて目撃していたのである。
その白い服を着た女性を最初に見た夜、看護婦は、その人のことを許可を受けずに入ってきた面会者だと考えた。看護婦が近づくと、その女性は消えた。
次の夜も、彼女はその女性の姿を見た。
この日はベッドの足のほうに立って、少年に話をしていた。
看護婦はその様子を数秒間見守っていてから、部屋へ入って行ったのすると女性はまた消えた。
次の夜、少年の容体は急変し、亡くなった。少年の意識が遠くなり始めると、医師たちはパニックに陥った。
医師たちは一日中、少年の体をむしばむ感染症が進むのを食い止めようと努力していた。少年が虫の息となって横たわっているこのときも、医師たちは少年を蘇生させようと九十分間も力を尽くしていた。
医師、看護婦、呼吸器の専門医などが少年を蘇生させようと頑張っているあいだ、腹立たしいことに、ある医師がそれぞれのやり方についてあら捜しのようなまねをした。さらに、少年の遺体を囲んでみなが立ち尽くしていると、そのいやな医師は少年が死んだ責任は彼らにあると思わせるようなことをいった。
こうしたいろいろなことが重なって、このストレスだらけの一日は、その看護婦にとって人生で最悪の日となってしまった。病室を出ると、みなそれぞれの方向へ散って行った。
彼女はユーティリティ・ルームに入って泣いた。
それから三十分ほどたってから、彼女はそこを出てナースステーションへ向かった。
その行く手に、彼女はあの少年が白い服の女性と手をつないで歩いて行くのを見たのだった。
引用文献:
メルヴィン・モース/ポール・ペリー著, 池田真紀子訳(1995)
『死にゆく者たちからのメッセージ』同朋舎出版, pp.106-107 |