病児・家族支援研究室 Lana-Peace(ラナ・ピース)
Lana-Peace 「大切なお子さんを亡くされたご家族のページ」
大切なお子さんに先立たれたご家族のために…
 
ご案内
Lana-Peaceとは?
プロフィール連絡先
ヒーリング・カウンセリングワーク
エッセイ集
サイト更新情報
日々徒然(ブログへ)
 
エッセイ集
悲しみで心の中が
ふさがった時
お子さんを亡くした
古今東西の人々
魂・霊と死後の生
〜様々な思想〜
アート・歴史から考える死生観とグリーフケア
 
人間の生きる力を
引き出す暮らし
自分で作ろう!
元気な生活
充電できる 癒しの
場所
魂・霊と死後の生〜様々な思想〜

親の怒りのエネルギーを憂う子

大切な人に先立たれた後、心の中にぽっかり空いた穴を「なかったこと」にはできません。
その穴と共に生きて行くしかない現実は、本当に苦しいものです。
でもその穴の開き方、穴の質によって、遺された人々の生きる姿勢は大きく違ってくるのでは…と思います。死後の世界を感じることが、心の変容に大きな役割を果たしてくれると思える本と出会いました。
ジョージ・アンダーソン氏の活動について書かれた本(Kindle版)『トゥルー ミディアム』です。こちら、糸川洋氏の翻訳で刊行された『死者は語る ― 魂をゆさぶるリーディングの奇跡』(1992, 講談社)と『WE DON'T DIE』(1991, 光文社)の一部を加えたものが、電子書籍化されたものです。これらは絶版になっており、Kindleとして読めることは、訳者の糸川氏の尽力によるものです。

アメリカ ニューヨーク州ロングアイランド出身のジョージ・アンダーソンさんは、霊能力を用いて、亡くなった方のメッセージを感じ取り、遺族にお伝えする活動をされている方です。ジョージさんは霊能者と呼ばれることを嫌がり、遺族カウンセラーと称されています。なぜならリーディングは「悲しみから立ち直れない遺族を慰めること」を目的にしているため。ジョージさんは「私のリーディングを受けた人は、ある種の心の平安を得て、元気を取り戻して、人生に立ち向かえるようになります。それが私の存在意義です。」と語っているように、遺された方々の気付きを促すものなのだと言えるでしょう。その気付きとは、死がすべての終わりを意味するわけではない、という気付き。死者とのつながりを心の中で感じながら、これからもしっかり生きていこうと思えること、そうした心の変容を後押ししてくれるのが、ジョージさんのリーディングの特徴だと思います。ジョージさんのリーティングを通して変容していった人々の心の動きは、とても学ぶべきものが多いと思うので、Lana-Peaceのエッセイの中で複数回に分けてご紹介したいと思います。

ジョージさんは6歳の時、重症の水疱瘡と髄膜炎にかかったことを契機に、霊能力を表すようになりました。当時ジョージさんは高熱が数日続いた後、全身が麻痺してしまい、2か月もベッド上で過ごす生活を強いられましたが、再び動け、歩けるようになった頃、霊の存在を感じるようになったのです。霊能力のせいで、いじめられたこともありました。カトリック系の学校に通っていたジョージさんは、シスターや神父から「精神病だ」と言われ、入院させられるような扱いも受けました。

やがて20歳を過ぎた頃、母親に誘われて地元の心霊研究会のような集まりに参加し、そこで自分の霊能力を肯定され、素晴らしい仕事につながると言われたことから、ジョージさんはようやく自分自身を受け止められるようになったのです。電話会社に勤める傍ら、近所の方々を相手に、細々とリーディングを続けていました。そんなジョージさんに再び転機が訪れたのは1980年、ジョージさん28歳の夏のことです。ジョージさんのリーディングを受け、とても感動した女性が実はラジオ局の方で、パーソナリティーにその話をしたのです。それがきっかけでジョージさんはラジオ番組で、リスナーのリーディングを行うようになりました。

しかしながら、ジョージさんの能力を訝しく思う人々も、大勢いました。ただ、実際にリーディングを受けると、その能力に感嘆していく科学者もでてきたのです。ジョージさんが知る由もない個人的な事柄を、どうして、ジョージさんの口から話が出てくるのか…?それはまさに霊からのメッセージとして信じる以外、ないような内容だったのです。中にはコロンビア大学の物理学者もリーディングを受け、その能力を認めたそうです。

更に、医師らのグループによっても、ジョージさんの能力は検証されました。ジョージさんのリーディングの特徴として痛覚移入があります。それは霊からのメッセージとして、亡くなった時の病気や事故の様子を知らせるために、当時感じた痛みを再現したり、遺族の健康状態について何か注意喚起をしたいため、特定部位の痛みがジョージさんに再現される、というものです。ジョージさんが嘘や空想で話をしていないかを調べるために、実験が行われました。冬の寒い朝、パンツ1枚になったジョージさんがリーディングを行い、リーディング中の身体の表面温度をサーモグラフィーで調べていったのです。検証の結果、ジョージさんの痛覚移入があった場所とサーモグラフィーで高温を示した場所は一致したそうです。つまり、ジョージさんが痛い、と感じたところは、ジョージさんに異常があるわけではなくても身体的な変化が起こり、その変化に基づいてジョージさんは痛みを口にしていたというわけです。

また、リーディング中、ジョージさんの脳波がとられたこともありました。そこでリーディング中は右側頭葉のみ、活動低下が生じていることがわかったのです。テレパシーや念力の実験も行われ、ジョージさんはそうした分野の能力に特に秀でている方ではないことがわかったそうです。

ジョージさんがリーディングする時は、特別何か幻想的な雰囲気の環境を用意するわけでもなく、日常の中で、霊とコンタクトをとれるのだそうです。また、よく死者に対して表現される「安らかに眠っている」霊を無理矢理起こすというものでもなく、メッセージを伝えたい、とジョージさんのところにコンタクトをとってきた霊を感じる、というやり方だそうです。実に不思議な話ですね。

亡くなった方の中でも、ジョージさんは、お子さんを亡くしたご家族にとても強い思いを持たれていました。先立ったお子さんの心情を、ジョージさんは次のように語ります。

子供の側でも、親と接触したいという欲求は強いようです。あの世からはこの世の様子が分かるのに、この世の父親や母親にいくら呼びかけても反応がないので、子供たちは非常にじれったい思いをしています。子供が出てきたがる理由はさまざまですが、共通して言えるのは、親に感謝していること、自分があの世で元気であることを伝えたいこと、いつか再会できるという希望を親に与えたいことでしょう」


引用文献:
糸川 洋(2012)『トゥルー・ミディアム』Kindle版,
第二章 子供を亡くすこと 「いちばん力を入れているリーディング」

親の立場からはこどもに対して、1人で逝かせてしまった、寂しくはないだろうか…と悲しくて、心配でたまらず、申し訳ない気持ちでいっぱいの方もいらっしゃることでしょう。
でも逆に、こどもたちの方がこの世に遺した親や家族のことを心配しているのだと知ると、あなたの気持ちも、少し方向が変わってくるかもしれません。

たとえば小学校に上がる前に、自宅のお風呂で溺れて亡くなった少年のお話。こちらはジョージさんが来日された時に、リーディングをされた日本人のご家族です。少年の霊はリーディングが行われる日の朝、お父様がジョージさんに会われる前に既にジョージさんの元を訪れていました。
『今日は親がリーディングをしてもらうことになってるんだけど、待ちきれない』とぴょんぴょん跳ね回っていたそうなのです。
この世の出来事は、すべてわかっているということでしょうか。

お父様が来られた時、リーディングの途中、ジョージさんは尋ねました。

「息子さんの夢を見ましたか」

「ええ!」

「息子さんはあの世からあなたが悲しんでいる様子を見て知っているんです。今は肉体をまとっていないけど、いつもあなたのすぐそばにいることを知らせたくて、あなたの夢の中に現れたんだと言っています」


引用文献:前掲書,
第二章 子供を亡くすこと 「その子は始める前にやって来た」

夢を通じて、実は再会していると思うと、夢をしっかり覚えておかなくちゃいけませんね…。

「事故にあったとき、あなたの奥さんが家にいましたか」

「はい」

「というのは、息子さんが『お母さんに自分を責めないように言ってください』と言っているんです。注意が足りなかったとか、風呂場を見ればよかったとか、自分の死に責任を感じないでほしいと言い続けています」

「…………」

「誰も責めてはいけないと息子さんが言っています。あれは自分でも知らないうちに、あっという間に起きた出来事で、誰がその場にいても、救うことはできなかった、悲しいことだけど、逝くべき時期だったんだ、と言っています」


引用文献:前掲書,
第二章 子供を亡くすこと 「息子からの厳しいメッセージ」

少年は一人でお風呂に入っていて、溺れて亡くなりました。その時、お母様は自宅にいらっしゃって、お父様は仕事で外でした。お風呂から出てこない息子の様子を見に行かなかったのは、妻の過失だ、責任だと思いこんでいたお父様は、強い怒りと憤りでいっぱいでした。でもそんなお父様の気持ちを少年は、すっかり御見通しだったのです。
少年亡き後、家の中の雰囲気が冷え切ってしまったことを、少年は随分憂い、母を責めないでほしいと繰り返し訴えました。

『お母さんを責めちゃだめ。
お母さんには、まるで責任はないよ』(略)

『なんでお母さんを責めるの? お母さんだって僕が死んだことがつらいのに、お父さんが責めたら、もっとつらいじゃないか。責めるのはやめてよ。その怒りはもう捨てなきゃ』

引用文献:前掲書,
第二章 子供を亡くすこと 「息子からの厳しいメッセージ」

さらに離婚まで考えていたお父様を、まるで年上の大人のように息子さんはたしなめたのです。

『離婚するのはお父さんの自由だから、自分の好きなようにしたらいいけど、今のしこりを残したまま離婚するのだけはやめて。離婚するんだったら、お母さんに責任はなかったことをはっきりさせて、お母さんと和解してからにして。
調和のある離婚をしてよ』」

「つまり喧嘩をしないで別れろと言っているんですか」

「そのとおりです。『怒りの代わりに愛を』と言っています。あなたの怒りは雪だるま式に大きくなっています。
そのためにあなたは幸せになれません。怒りを解き放つことが大事です」

引用文献:前掲書,
第二章 子供を亡くすこと 「息子からの厳しいメッセージ」

少年は妹のことも心配していました。なぜなら、お父様は娘さんに辛くあたっていたからです。

『お父さん、なに言ってるんだ? ともみになんの責任があるんだ? ともみが僕じゃないのは、ともみのせいじゃない。
僕が死んだせいで、ともみをないがしろにするのは、絶対におかしいよ!』(略)

『約束して、約束して、お母さんと、妹と仲直りすることを、約束してよ』

引用文献:前掲書,
第二章 子供を亡くすこと 「息子からの厳しいメッセージ」

少年は、父親をたしなめるだけではなく、父の身体のことも、大変心配していました。 睡眠不足で疲れている父を気遣い、しっかり休養を取ってほしいとねぎらいの気持ちに溢れていたのです。

そしていつか父親も寿命が尽きて人生を全うした暁には、自分に会えるのだから安心してほしいことを伝えると、お父様はそれはいつだ!すぐにでも!と興奮気味に大声をあげたのです。
そこからのやりとりは、少し長くなりますが、大切なところなので、全文を抜粋したいと思います。

息子さんは、『そういう考えかたは絶対だめ』と言っています。あなたにはこの世での使命があるんです。それを果たすまでは、前向きに生きなければなりません。もしかして生きる気力をなくしていませんか」

「はい……仕事をしていても、生きていても、まったく意味がないような気がするんです……」

「息子さんは『お父さんは、僕のためだったら何でもしてくれるよね』と言っています」

「ええ、そりゃ、もちろん」

「『だったら、お父さんにしてもらいたいことがある。
ひとつはお母さんを許すこと。それからともみにやさしくしてあげること。それからお母さんと和解すること。
何度も言うけど、絶対にお母さんのせいじゃないからね。それから強く生きていくこと。最終的には僕に会えることがわかったんだから、安心して自分の務めを果たして。
お父さんには、お父さんなりの修行があるし、人生の目的があるんだ。いい? 約束して』と言っています」

「女房を許さなければならないんでしょうか」

「そうです。非常に難しいことですが、そうすればとても心が安らかになるんですよ。悪い感情を捨ててしまわないと、いつまでも同じ状態に留まって、抜け出せなくなるよ、と言っています」

再び長い沈黙のあと、男性は言った。
「わかりました。努力します」


引用文献:前掲書,
第二章 子供を亡くすこと 「息子からの厳しいメッセージ」

とらわれてしまった感情から抜け出すことは、本当に難しいですね。でも、少年が心配していたように、その感情が様々な人に波及して、不幸せなモードを倍増させていったのです。そこを越えていくことによって、お父様も、お母様も妹さんも、みんな幸せになることができるのです。

生前、動物や昆虫、花が大好きだった少年は、亡くなった後、あちらの世界で動物の世話をしているそうです。ジョージさんはキリスト教徒ですが、リーディングでは「THE OTHER SIDE」と表現されています。天国や地獄といった宗教観を持たない、次元の違う世界。
少年が世話しているうさぎ、猫、犬…それらの動物は、この世で残酷な目に遭い、亡くなった動物たちだそうです。その動物のお世話を通して、動物が他者への信頼を抱き、心の平安を得られるように、少年はお手伝いしているのだそうです。
亡くなった後、お子さんが誰かのために力を尽しているって、すごいですね。 そして心優しい少年は、やっぱりお父様の抱える強い怒りが、リーディングセッションの最後まで気になって、仕方がないのです。

息子さんがあなたを愛で抱きしめています。お祈りを続けてください。それからさっき言ったことを真剣に考えてくれと言っています。頑固さと怒りを捨てるように、そして奥さんを許すこと、お嬢さんにうんとやさしくすること。
『お父さんは百回言わなきゃわかんないんだから。でもお父さんが好きだよ』と言っています。
また会う日まで、さようなら……これで通信は終わりです」

引用文献:前掲書,
第二章 子供を亡くすこと 「息子からの厳しいメッセージ」

なんだか、ジーンといたしますね。このリーディングの後、お父様の心は動かされていったのです。後日、お礼の電話でこのようにお話されていたそうです。

「どうもありがとうございました。あれは息子に間違いありません。なんと言っても、嬉しいと飛び跳ねるというのは、間違いなく息子です。生前そのままの個性で現れました。

それから、息子の言葉は含蓄が深く、いろいろ教えられました。
たとえば、家内と調和しろという意味で使ったHARMONYという言葉も、単なる調和では説明できないような、とても深い意味を持つ言葉だと思います。考えさせられます。

リーディングの録音テープを何度も繰り返し聞きながら、じっくりと息子の言葉を噛みしめています」

引用文献:前掲書,
第二章 子供を亡くすこと 「息子からの厳しいメッセージ」

 
お子さん亡き後、無気力となり、怒りをエネルギーにして生きるあなた。それ憂う眼差しを、お子さんはあなたに向けています。みんなが心平安な時間を持てることを、お子さんは何より、願っています。  
2016/7/12  長原恵子
 
関連のあるページ(ジョージ・アンダーソン氏)
「親の怒りのエネルギーを憂う子」 ※本ページ
「息子に届いた母の祈り」
「たとえ生まれ出ることはなかったとしても」
「僕は無事なんだから」
「時を大事に生きるならば」
「言えなかった言葉の裏」
「思いが届かないもどかしさ」
「脳死となったお子さんの魂」
「この世の命は短くとも」
「祈りによって続くつながり」
「祈りが息子にもたらした平安と成長」