お子さんが亡くなってから、ご両親はなかなか元気になれないものです。 「早く、元気になって」という励ましの言葉も、他人事のように聞こえるかもしれません。それがあなたに対する心からの愛情に基づく言葉であっても、「そうは言われても、こればかりは、どうにもこうにも…」と心の声が反響していることでしょう。 何か自分が求められている役割がある時、たとえば「父親」や「母親」としての役割である場合、無理に元気を出そうと努めていらっしゃいませんか? 亡くなったお子さんに兄弟姉妹がいらっしゃる場合、そのお子さんたちにとってもあなたは父親であり、母親なのです。「無理に元気を出す」というよりも「無意識に元気を出そうとしていた」という表現の方が、正しいかもしれません。 また誰かの目がある時、たとえば仕事に出かけている時、職場の人たちの前では、気丈に振る舞っていらっしゃるかもしれません。 そんな時は、自分が自分でないような気持ちだけれども、頑張る自分を演じることで何とかその場を切り抜けられるのでしょう。 「父親」や「母親」から一人の「人間」に戻って眠りに就く時、どうしようもないような虚脱感に襲われる方がいらっしゃいます。 仕事を終えて、車のエンジンをかけようとした瞬間に、頭が空白になってしまい、しばらく駐車場でぼうっと過ごすこともあるでしょう。 駅のホームで電車を待っている時、家族連れを見かけてしまうと「こんなに世の中、人がたくさんいるのに、よりによって、どうしてうちの家庭にあんな悲しいことが起こってしまったのだろうか。」と湧きあがる思いを抑えられず、またそこで、虚しさでいっぱになることも。 深い絶望とこの世への失望のあまりに「早く、自分もあの子のそばにいかせてほしい。」そう思っている方も、いらっしゃるかも…。 そのような時に聴いてほしい歌があります。 小田和正氏のアルバム「小田日和」の中の「その日が来るまで」です。 今は救われて、守られて、平安な世界で心穏やかに成長しているお子さんが、ご両親に向けて送られたメッセージのように思えます。 「君」という部分をあなたのことだと思ってみてください。
君が好き 君が好き それを伝えたかったんだ 遠くから ずっと 君を思ってた
いつか その日は きっと来るから 時はやさしく 流れるから
雪が溶けてゆくみたいに 今はそのまま ゆっくり ゆっくり 元気になって
引用楽曲: 作詞・作曲小田和正(2014)「その日が来るまで」 (アルバム「小田日和」より)
冬の長い豪雪地帯にも、必ず春がやって来て、お日様の光によってだんだんと雪は溶けていきます。風も凍りつきそうな寒い日に、雪の重みに耐えていた枯れ木も、春になったらゆっくりと芽吹き始めます。 昨年5月中旬に訪れた新潟県南魚沼市では、地元の方のお話によると4月に雪の降る日があったそうで、日陰には雪が少しまだ残っているところもありました。そのため山から流れてくる水も冷たく、5月に入ってようやく田植えが始まったのだそうです。 遠くの峰の頂には雪が足跡を残しているけれど、山麓の木々には葉が茂り、地面を覆い尽くすほどの菜の花が咲き乱れていました。 あなたも同じ。大地と同じようにたくさんの力が潜んでいます。 無理に除雪しなくても、お日様のあたたかさを十分大地が受けとめれば、必ず雪は溶けていきます。 それは大地に生きるご両親に向けて、お日様のような愛情を寄せるお子さんの姿に重なります。