心安らかな夜と充たされる心 |
お子さんを亡くされた後、昼間はおうちのことや、仕事で何とかどうやら忙しく過ごしているけれども、夜になると張りつめていた気持ちが一気にしぼんでしまい、何か無性に虚しい気持ちで心の中がいっぱいになる…
そういう気持ちは、お子さんを亡くされた方の多くが経験されていると思います。
夜、子ども部屋をのぞきに行って、空のベッドを眺めては、その場に座り込んで、しばらくぼーっと時間を過ごす時もあるでしょう。
お子さんと添い寝をしていた方にとっては、寝返りを打った時にはっと気付くその広さに、思わず泣けてくるということもあるでしょう。
1日が終わる夜が、あなたにとって最も心が寒々する時間かもしれません。
あなたの今日1日がどうであったのか、それはあちらの世界で過ごしているお子さんにとっても、気がかりなことなのです。
小田和正氏のアルバム「小田日和」に最後に登場する「やさしい夜」という歌は、あちらの世界から毎晩、あなたの幸せを願うお子さんの気持ちが表されたかのような言葉が綴られています。 |
やがて今日がおわっていく。
心残して
ここから見える町の明かりが
また一つ消えていく
祈るような思いはただ一つ
君の心安らかに
また明日が始まるまでの
ほんの短いひととき。
(略)
祈るような思いはただ一つ
君の心安らかに。
君の願いが明日叶うように。
引用楽曲:
作詞・作曲小田和正(2014)「やさしい夜」
(アルバム「小田日和」より) |
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「心安らかに」
それはとても大切なことです。
日本語では「安らかに」というと、「どうか安らかに眠ってください」というように、亡くなった方へ向けられる言葉として使われることが多いのですが、この世で生きている者にとっても、大切な言葉です。
今日1日、あなたには、いろいろなことがあったはず。
ずっと寂しくて、悲しかったかもしれないし、少し嬉しいことや楽しいことがあったかもしれない。
いろんな感情が入り乱れていようとも、夜眠る時に、心安らかな気持ちになれることは、とても大切。なぜなら、それはそうしたいろいろな気持ちの波を、居心地の良い充電できる状態に収めることができた、ということを意味するから。
辛い気持ちを隠してほしいというのではなくて、悲しい気持ちにふたをしてほしいというのではなくて、日中、いろんな苦しい気持ちが湧きあがったとしても、1日が終わる時には、その感情の揺れが、心地良い波へと鎮まってほしいのです。
なぜならそれは、あなたの明日の活力へとつながっていくから。
どうやったら、自分の心を居心地の良い状態に鎮められるのでしょう…
それはあなたの幸せを、あなたのお子さんが願っている、ということに気付くことです。
でも、それがあなたにとって、一番難しいことかもしれない。
なぜならお子さんに先立たれた多くのご両親は、お子さん亡き後に、自分が幸せを感じるなんて、とんでもない!と思っているから。
幸せに思えるような瞬間が起こるはずがないと思っているし、幸せに思う自分を許せないと思っているから。
この世に生まれてくる時、もしかしたら、人の一生の長さは決められているのかもしれません。中には初めから、この世で過ごせる命は短いと決まっている人もいるのかもしれません。
たとえばそうだと仮定してみましょう。
お子さんの魂は生まれる前に、親になってくれる人を探していた。
短い人生だとわかっていながら、それでも自分をかわいがってくれ、自分の人生を丸ごと引き受けてくれる親を…。
きっと、いろいろな大人から断られたかもしれない。
「引き受けたいのはやまやまだけど、でも自分たちには無理…」と。
だけど、きっとあなたはお子さんの魂にこう言ったのだと思います。
「人生短くても、あなたのことたくさんかわいがって、大事にするよ」
そういう自分が受け入れられたことに、お子さんは心からあなたに感謝をしていたのだと思います。
そのようないきさつがあって、生まれたご縁のこどもは、短い命を生きて逝ってしまうのだけれど、心の中はあなたへの感謝の気持ちで一杯です。
「やっぱり短い人生だったけど、両親は約束を守ってくれた。自分はこんなにかわいがってもらって、大事にしてもらった!! あの時、出会えて良かったなあ…」と。
だから、お子さんはあなたの幸せを願わずにはいられないのです。
あなたが1日を終わる時、心安らかな気持ちで眠りにつき、そしてまた朝を迎えて気力の充ちた日を過ごしてほしいと…。 |
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お子さんとあなたのつながりが、あなたの心の安らぎをもたらし、これからの活力へつながりますように…。 |
2014/9/6 長原恵子 |